第12章 意図的な再会
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「うわー。本当にこの階だけ全焼ですね…。」
「資料見ただけじゃあ信じられなかッだけど…凄いね。」
「……。」
一番最初に放火被害に遭った現場に到着し、敦と谷崎が各々感想を述べる。
「でも、何で放火犯はこの階だけ燃やしたんでしょうね?僕が放火犯なら他が燃えることなんて気にしないと思うけど。」
「それもそうだね。」
敦と谷崎が疑問を口にしていると現場まで案内してくれた警察官が追加で情報をくれる。
「この火事でこのフロアの従業員が6名亡くなっています。それも社長をはじめ、上の役職の方ばかりです。」
「…そうなんですか。」
「人が亡くなってる程の火事を起こしてるンだから余計にこのフロアだけを気にするなんて――」
「恐怖を植え付けるためでしょ。」
「「え?」」
それまで一切会話に混ざらなかったアリスの言葉に二人が振り向いて反応する。
「このビルを丸ごと全焼させるのは簡単。その気になれば誰でも出来ることでしょ?でも敢えて一部だけを燃やすことによって恐怖を与えたんだよ、きっと。」
「恐怖を……与えた……?」
「そう。『お前達だけを確実に狙っている』或いは『これからお前達を確実に仕留める』って云う次のターゲットに対する意思表示。」
「「!」」
キョロキョロと辺りを見渡しながら冷静に分析するアリスを、敦達だけでなく現場検証を行っていた警察関係者全員が注目する。
「成程…。この被害者たちは共通の何かに関連しているッてことか。」
「そういうこと。」
「アリスちゃん…。真逆とは思うけど既に『共通の何か』まで判っちゃってたり…?」
「あはは。真逆。」
敦に云われてニッコリと笑って返すアリス。
「ハハハッ。そうだよねー。」
「今の時点で分かってるのはマフィアが関わってるって事だけかな。『何か』をハッキリさせるには流石にもう一寸調べないと――」
「「矢っ張りもう解ッてるンじゃん!!」」
一斉にツッコミを入れられ、キョトンとした顔で首を傾げる。
「え?その程度でいいの?」
「その程度って……かなり重要な事だよ!」
敦がアワアワしながらアリスを褒める。
「身体は子供。頭脳は大人…。」
その仕草に誰かがボソリと呟き、周りでそれを聞いていた人達が頷いた。