第12章 意図的な再会
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「あー疲れた。現場に居る時間より、移動の時間の方が掛かるんだもん。あ、アリスー。僕にもお茶淹れて?」
「まあ何時もの事だよ、乱歩兄。」
コポコポと紅茶を注ぎながらアリスは云う。
注ぎ終わった紅茶を乱歩に渡し、自分の分に口を付ける。
「それで次は何の仕事?」
「連続放火事件だ。」
「放火ぁ?」
国木田が資料を見ながら質問してきたアリスに答える。
乱歩は殺人事件ではないからと仕事拒否の旨を述べていたのだが、話だけは聞く気らしい。
「ここ最近、企業のオフィスが全焼する火事が4件たて続けに発生している。」
「ふーん。」
「その犯人捜しですか?」
「まあ…。」
「ウチが動く理由に欠けるね。他に何かあるの?」
谷崎の質問に国木田が歯切れの悪い返事をする。
興味無さそうに相槌を打っていた乱歩が駄菓子を頬張りながら口を挟む。
「10階建ての集合オフィスの1つ、自宅を職場に改装していた小規模企業等、放火に遭った企業の共通点は無い様ですが……火災の被害状況が……。」
国木田がアリスの方を見る。
それに気付いてアリスが紅茶のカップを置く。
「隣接する建物に被害が出てないのか。」
「はい……。」
「先に云っとくけど、私じゃないよ?そんな詰まらないことを何の利益も無しにやる程、暇じゃない。」
「そんなことは解っている。しかし、お前以外にも同じ様なことが出来る人間が居るのか、或いは何か仕掛けが有るのか判別出来ん。」
「あー。だから私に現場に行って見てこいってことね?」
黙って頷く国木田を見てアリスはやれやれと云わんばかりに溜め息を着く。
「潤兄も行くんでしょ?」
「うん。宜しくねー」
準備を終えたのか立ち上がる谷崎。
「現場の確認と放火犯の特定に繋がるモノの捜査だ。次の被害を出さないために急げ。」
「了解。」
「はーい。」
ガチャリ
「戻りましたー。」
国木田の指示に、谷崎とアリスが返事したのと敦の帰社が重なる。
「じゃあ、あっくん頑張ろー!」
「えぇ!?今帰ってきたばかりなのにー!?」
「敦君、内容は行きながら話すよ。」
アリスは敦の姿を認識すると、その腕を取って事務所を出て行く。
その後ろを谷崎が着いていった。