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【文スト】不思議の国の異能少女

第12章 意図的な再会



「結局、ウチが引き受けるンですね。」

「ああ……。」

苦笑しながら谷崎が云うと国木田が難しい顔をしていることに気付く。

「如何かしたンですか?」

「否、何となく気になってだな……。」

「え?」

谷崎が訊ねるとフッと息を吐き、告げた。


「あの少年、何処かで見たことが有る様な気がするんだ」

―――

敦は階段を急いで降りるも次の行く方向で困り果てた。

「右か左か……」

まだそう遠くには行ってない筈だがこの選択を誤れば完全に見失う筈。
うーん、と唸りながら考えていると探偵社のあるビルの一階に入っている馴染みの喫茶店に目が行く。


「あっ!」

敦の目に目的の人物達が映り、直ぐに喫茶店の扉に手を掛けた。

「太宰さん!」

「うん?」

名前を呼ばれて敦の方に顔を向ける太宰。

「良かった…まだ遠くに行ってなくて。」

「敦君も一緒に?」

「はい。国木田さんに言われて。」

「…そう。」

「?」

太宰の顔が一瞬曇った気がして敦は首を傾げる。

それはただの気のせいだと云わんばかりに太宰は笑って敦に話始める。

「山田くんは生き別れになった姉を捜しているらしい。」

「お姉さん……ですか。」

「はい……。」

敦は太宰の隣に座り、山田と名乗った少年を見る。

その表情は暗く、悲しみで染まっている。

「いつ頃離れ離れに?」

敦の疑問に山田は首を横に振る。

「済みません。何も分からないんです。僕に姉がいたって云う事自体、最近知ったんです。今に至った経緯を、姉なら知ってるんじゃないかと思ったら会って……如何しても話をしたくて。」

「そうなんだ……。」

何やら複雑な事情があるのかもしれないと思い、敦はこれ以上深く聞くことはせずに太宰を見る。

「取り敢えず、移動しようか。」


そう言いながら太宰が席を立ち、それに敦と山田が続いた。




「山田くんも孤児院育ちなんだね。」

「僕もって事は敦さんも?」

「そうだよ。」

苦笑しながら敦と山田は話している。
太宰は黙って聴いている。

「孤児院生活…大変だったんですか?」


「そうだね…思い出したく無い程に。山田くんは平気そうだね?」
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