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【文スト】不思議の国の異能少女

第12章 意図的な再会


「君、探偵社に用事だったのかい?」

太宰達が居るのは階段の踊り場。
探偵社まで目と鼻の先の位置だった為、敦の後ろから少年に声を掛ける。

「え?あ、はい。でもお忙しいみたいで…。」

その質問の答えを聞いた瞬間、太宰の眼が輝いた。

「………。」

敦の脳内に嫌な予感が過る。


「少年は実に運が良い!私達は一仕事終えて事務所に戻るところだったのだよ。」

「え!?お二人も探偵さんなんですか!?」

太宰が少年の前に移動して云う。
少年は驚き、敦は矢張りと頭を抱える。

「私が君の依頼を引き受けよう。」

「え!良いんですか!?」

「ちょっ!太宰さん!?」

胸に手を当てて得意気に云う太宰の方を期待の眼差しで見る少年。
勿論、敦は慌てて止めに入る。

「少年、名前は?」

「僕は山田一と云います。」

「そうか。では山田くん。早速行くとしよう!」

「有難うございます!」

「というわけで、敦君は先に戻り給え。私は山田くんの依頼を解決してくるよ。」

「そんなー……。」

そういうと太宰は山田と名乗った少年と一緒に、今通ったばかりの方向へと引き返していった。

「はあー。」

それを溜め息をついて見送った敦はトボトボと事務所に戻った。

「只今戻りました。」

「あ、噂をすれば!おかえり、敦君。」

「遅かったじゃないか。」

「うっ…。」

探偵社の扉を開けると直ぐ傍で話していた国木田と谷崎兄妹が此方を向く。
予想通りの事を国木田に突っ込まれ、言葉を詰まらせる敦。

「ん?敦、太宰は如何した?」

「えっと…ですね……!」

国木田の鋭い眼差しにビクッとして説明し始める。

「直ぐ其処で摺れ違った少年の依頼を解決してくると行ってしまいました。」

「「!」」

「……?」

怒られると思い、俯き気味に話していた敦だったが、説明を終えても予想していた怒号が飛んでこず、ゆっくりと顔を上げる。

「敦。」

「は、はい!?」

「お前も二人を追い掛けろ。」

「えっ…あ、はい。判りました!」


説教でなく仕事が増えただけで済み、敦は安堵しながら事務所を後にした。
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