第12章 意図的な再会
「話は判った……。が、今、少々立て込んでいて如何しても人員が割けん。済まないが他所を中ってもらえんか?」
国木田が眼鏡の位置を正し、目の前に座っている少年に頭を下げる。
「そんな…!頭を上げて下さい!こんな子供の話を聞いてもらえただけでも充分有難いです!お忙しいのにお手間をとらせてしまって申し訳ありませんでした。」
来客用のソファーに座っていた少年は慌てて立ち上り、国木田にお辞儀をしながらお礼を述べる。
「礼儀正しいですわね。」
「本当だね。」
その様子に感心する谷崎兄妹。
「それでは失礼します。」
最後に事務所をキョロキョロと見渡してから入り口で一礼すると少年はニコッと笑って探偵社から出て行った。
「たッた一人の家族を10歳に成ッたばかりの少年が探しているなんて…何か可哀想なことをしましたね。」
「ああ…。しかし、そうも云ってられん。あの程度の人探しなら普通の探偵でも大丈夫だろう。……まぁ、太宰たちが戻ってきてたなら敦にでも頼んだんだが。」
ふぅ、と息を付きながら話す国木田。
「そういえば遅いですね、太宰さんと敦くん。」
「どうせ太宰の奴が川にでも飛び込んでるんだろう。」
「乱歩さんとアリスちゃんも遅いですわね。」
「そうだな…。だが、其方は何かあっても大丈夫だろう。」
「ハハハ…ですね。」
―――
「太宰さんが急に川に飛び込むから遅くなってしまったじゃないですか。」
「そうかい?明るい内に戻れたから良いではないか。私は机の上を見るのが嫌だから早く帰りたくなど無いのだよ。」
「国木田さんに絶対怒られる……。」
はぁー。と盛大に溜め息をつきながら事務所までの階段を昇る敦と、戻るのが嫌そうな太宰。
ドンッ
「!」
「うわっ!」
落ち込みながら歩いていたせいか、不注意で階段を降りてきていた少年とぶつかる敦。
体格の差で飛ばされて倒れそうになった少年の腕を直ぐに掴み、転倒は真逃れた。
「ごめんね!前をちゃんと見てなくて!」
「いえ、此方こそ済みません。有難うございます。」
敦の謝罪に、助けてもらった礼を述べる少年。