第11章 変化
「治兄の異能力を認知してるから…無意識で接触を回避したのかも。回復する前に治兄が触れちゃったらどうなるのか、私にも解らないし。」
ふぅ。と溜め息をついて、ハッとした顔でキョロキョロするアリス。
「そう言えば治兄は?」
「太宰なら医務室だ。」
「医務室!?何でまた……。」
「アリス、5日間も行方不明だった自覚ある?」
「え!?5日!?」
アリスが乱歩の言葉に驚く。
「分からなかッたのかい!?」
「うん。力の代償と違って完全に眠りに入っちゃうから。でも…銃で撃たれたときですら1日半だったのに……。」
「それだけ致命傷だったんじゃないかな……。」
敦がポツリと云う。
「あー。そうなのかも。ん?あっくん?どうしたの??」
心配そうに云うアリスの言葉に首を横に振る敦は、今にも泣きそうな顔をしていた。
ハッとその原因に気付いて敦の頭を撫でる。
「私の怪我をあっくんが気にすること無いよ?それに…充分過ぎる代償を貰ってると思うし。」
「え?」
「死んだんでしょ?私を刺した二人。」
「如何してそれを!?」
泣き顔が一転して驚きの表情を浮かべる敦。
「私は私を傷付ける人間を赦せないみたいなんだ。」
苦笑しながら答えるアリス。
「大分、力のコントロールが出来るようになったからあれくらいで済んでるけど…前は、攻撃された時点で相手を殺しちゃうくらいだったんだよ。」
「……。」
「ずっと前は私も銃なんかとは無縁の世界に居たからね。よっぽど初めて撃たれた事がトラウマなのかも。……もう昔過ぎて覚えてないけど。」
少女が、少女らしからぬ理由に少し触れた。
少し悲しそうに話すアリス。
誰も掛ける言葉を持ち合わせてはいなかった。
それに気付いてかニッコリ笑って話を変えるアリス。
「私も治兄と一緒に寝てくるね?あ、それとも5日分働いた方が良い?」
「今は休め。」
「わぁい。ありがとー社長。おやすみなさーい。」
そう云うと早々と事務所を後にした。