第2章 夢主
―――
アリス―――
身体を揺さぶられて意識が浮上する。
「―――夢。」
目を開けると何時もの天井。
私の住んでるホテルの天井だ。良かった。
「随分魘されてた様だけど大丈夫かい?」
「うん、昔の夢を見ただけだから。有難う、治に…」
其処まで言って、声のする方へ勢いよく顔を向ける。
ニコニコ笑って隣で横になっている人物の姿を捕らえて溜め息を付く。
「……何で此処に居るの?」
「アリスに逢いたくなって。」
イヤ、不法侵入ですよ。咎めないけど。
様子がおかしい。只の勘だけど。
「如何したのっ…!」
不意に抱き締められる。
「如何したって、別に?何も無いけど。恋人だから此の位は普通で「ワンダーランド、発動されたら困るから抱き締めてるくせに。」……。」
まぁ、私も抵抗する気がないから大人しく抱き付かれたままなんだけど。
でも私達、恋人だったっけ?
なんて思ってたら抱き締められてる腕に力がこもる。
「織田作が死んだ。私はマフィアを抜けるよ。」
「!」
そう短く告げると、私を解放する。
ゆっくり起き上がり、私の頭を撫でる治兄。まともに治兄の顔を見て、漸く眼に光が灯ってない事に気付く。
本当に作兄が亡くなったのか。
「…私マフィアじゃないし。」
偶に治兄や中也兄の手伝いをしてただけで。
そう言うと私も身体を起こす。もうそろそろ朝日が上る頃かな。
「嗚呼、そうだったね。」
「マフィア抜けて何する心算なの?」
「武装探偵社に入る。」
へぇー武装探偵社かー……。
ん?
武装探偵社?!
「イヤイヤイヤ!」
思わず片言になった。否、でも無いでしょ!
「何が嫌なのかい?はっ!私と一緒に居るのがかい?!私はもうアリス無しでは生きていけないから若しそうならば共に心中を「そういうの、いいから。真面目にしないなら飛ばすよ?」
シリアスな場面だった筈なのに。治兄は何時もそうだ。
「大真面目だよ。織田作と約束したからね。」
フッ、と悲しい表情が混ざった笑みを浮かべて言った治兄の言葉に嘘はなかった。
色々考えた結果ってことか。
「……そっか。」
「だから、一緒においで?」
「!」
今度は後ろから抱き締められる。
治兄と一緒に、か。
でも…
「警察も異能特務課も嫌い」
夢のせいかな。イライラする。