第2章 夢主
「いのーりょくなんて知らない……。」
そんな言葉、聞いたことない。
「不思議な力を使える人のことだよ。一昨日、君が使った力こそ、正に異能力だ。」
「!」
ふしぎなちから?
それは確かにあるかもしれない。
昨日の事は分かんないけど。
でも、私が言ったことにパパとママがビックリしてたことがある。
私は前から皆の『嘘』が判る。
『私の中にいる』変わった色の猫の首輪の鈴が、嘘の言葉を聞くと鳴るんだ。
でもそれがなに?
悪いことしてないのに。
じゃあ私は酷い目に遭ったの?
だったら猫も、あんな変な力も、要らないのに。
あの変な力があるから、大人の人に殴られたの?
あの変な力があるから、大人の人に鉄砲で打たれたの?
あの変な力があるから、私はパパとママにお金で売られたの?
『チガウ。ソウジャナイヨ。』
『チカラハアリスヲマモッタデショ?』
『ダッタラ…ワルイノハ?チカラジャナクテ……』
―――パパトママガ私ノコトヲオ金デ売ッタリシナキャ、私ハ酷イコトサレナカッタ―――?
ぐるぐるぐる。
何か頭の中が変。
自分じゃないみたい。
もしかしたら自分じゃないのかもしれない。
「――っ」
勝手に涙が溢れてくる。
悲しい?
痛い?
苦しい?
寂しい?
虚しい?
何もわかんない。
空っぽだ。
でも、涙はどんどん流れていく。
そんな私の頭をぽんぽんと撫でて、××は笑いながら言った。
「一緒に強くなろう。強くなって、皆で此処から出るんだ。」
久しぶりの優しさに暫く声をあげて泣いていた――。