第11章 変化
―――
「今日で5日目か…。」
「はい。」
太宰を見ながら国木田が小声で言い、敦がそれに返事する。
目の前でアリスが消えて丸4日が過ぎた。
何時もと違って机に向かい仕事をしている太宰を心配そうにみて、敦が云う。
「本当に探さなくていいんでしょうか?アリスちゃんの異能力だったなら良いですけど、若し他の異能力者がアリスちゃんを拐っていたなら…!」
「然し、太宰の話を聞いた限りでは俺もアリスが自分で消えたとしか思えん。」
「それはそうですけど…。」
あの後、社に戻り事の全てを報告した二人。
全てを聞き終えたあとにアリスの捜索を全ての調査員に言い渡そうとした福沢を太宰が止めた。
『アリスが消えたのはアリスの異能力だと思われます。』
『然し』
『アリスが消えた直後、アリスに怪我を負わせた連中だけが突然、アリスを傷付けた箇所に怪我を負い――死亡してます。』
「……。」
あの日の事を回想しながら黙り混む敦。
「お前が気に病んだってアリスが帰ってくるわけではない。」
「判ってますよ!でもっ!」
「そんな顔をしていたら戻ってきたときにアリスの方が心配する。」
「!」
敦にそう云うと太宰の方へ歩み寄る国木田。
「お前もだ、太宰。医務室のベッドで少し休め。全く寝て無いんだろ?」
「そんなことはないさ。私なら平気だよ。」
ヘラッと笑って見せるも無理している事くらい誰にでも判るほど弱っている。
「仕方ない。おい、敦。与謝野先生を呼んできて…」
ビクッ!
「あ、お言葉に甘えて少し寝てこようかな。」
そう言って立ち上り、医務室の方へ消えていった。
「ずっと此処に居た妾に気付かないッて位、大丈夫じゃあなさそうだね?」
「はい。何時ぞやの時と一緒ですよ。」
ふぅ、と息を吐く国木田。
「何時ぞやって?」
「さぁ……?」
鏡花が敦に訊ねるも、敦も首を傾げ、解らないと意思表示する。
「アリスちゃんが探偵社に入る前、5日間ずッと眠ッたまま起きなくてね」
谷崎が説明する。
「5日間!?」
「アリスちゃんの能力は負担が大きいらしいンだ。」
「……そうだったんですか。」
矢張り、良いことばかりでは無いのか。