第11章 変化
「治兄、危ない!」
「!」
アリスの言葉で太宰が男の拘束を解き、ギリギリで避ける。
此れを逃さない男ではなかった。
流石、元警察官。
俊敏な動きでもうひとつ隠し持ったいたナイフを素早く取り出し――
「「アリス(ちゃん)!」」
「っ!」
アリスの腹部に突き立てた。
太宰に向けてナイフを振り翳した男もアリスの背中にナイフを突き刺す。
アリスがゆっくりと崩れ落ちると同時にパトカーが到着し、警察官が駆けつける。
「「!?」」
拳銃を構えて囲むもナイフが刺さり、血塗れのアリスの姿に驚愕する。
元警察官の男は狂ったように笑いだし、敦と太宰の方を見る。
「ははっ……はははは!お前達も大事なモノを失う辛さを思い知―――」
カッ!
突如、眩い光と共に透明な四角の箱が出現し、アリスを覆う。
「「!!」」
大人の目線ほどまでゆっくりと浮かび上がった途端、眩い光を放ち―――消えた。
「………アリス?」
敦だけでなく太宰ですら混乱している。
カランカラン……と血塗れのナイフが地面に落下する音だけが嫌に響いた。
「何だ!?何が起こっ―――がはっ!?」
「!」
元警察官の男が突如、腹部を抱えて蹲る。
「ぐっ!」
次に小さく悲鳴をあげたのはアリスの背中にナイフを突き立てた男。
何の前触れもなく、背中にバッサリと斬られたような切り傷が出来、大量に血を噴き出し倒れた。
「!?」
その光景を、誰もが状況を理解できないまま観ていた。
「………敦君………救急車……。」
「えっ……あ、はい!」
漸く声を出すことが出来た太宰が、動けずにいた警察の代わりに敦に救急車の要請を指示する。
何も無い状態から突如、怪我を負った男達は既に虫の息だった。
敦の返事でハッとした警察官数名が事態の収集に動き出し、辺りが騒然とし始めた―――。