第11章 変化
「でも凄い異能力。」
その言葉に太宰を除く三人も頷いて同意する。
「凄い…か。」
鏡花の言葉をポツリと復唱するアリス。
太宰が苦笑してアリスの頭を撫でる。
「ほら、アリス。報告書を届けるよう社長に云われたでしょう?もう出来ている様子だし行こうか。」
「…ん。」
太宰の言葉にコクリと頷いて国木田の机の報告書を手に取る。
「では、私達は仕事に行ってくるよ。」
そう言って二人は事務所から出ていった。
「……私、悪い事言っちゃったのかな?」
「きっと大丈夫だよ。」
敦が鏡花の頭を撫でる。
その時、国木田の机に目が行く。
「あれ?その用紙は報告書の一部じゃ無いんですか?」
「!1枚入れ忘れていた!敦、追いかけろ。」
「判りました。」
紙一枚を受け取り、敦も慌てて事務所を出ていった。
―――
「凄いなんて初めて云われた。」
資料を抱えて太宰を仰ぎ見るアリス。
「今まではアリスがその力で散々、怖い目に合わせてたからね。」
「喧嘩売ってくるからでしょ?私は私を守っただけだもん。」
「そうだね。でも、此処はアリスを攻撃してくる人ばかりではないだろう?」
「……。」
「アリスの力の使い方が変わった証拠さ。皆を守ったり、難しい案件をアッサリ解決してくれるからね。凄いと思うのも当然だと思うよ。」
「……別に変えた覚えなんて無いけど。」
「太宰さーん!アリスちゃーん!」
ふふっと笑いながらアリスの頭を撫でていると突如自分達の名前を呼ばれたため立ち止まる二人。
「良かったっ……間に合った。」
「あっくん。どうしたの?」
息を切らせながら二人の元に駆けつける敦。
その呼吸を整えると手に持った用紙をアリスに渡す。
「入れ忘れかい?」
「はい。一枚だけ残ってて。」
「ありがとーあっくん。」
ニッコリ笑って用紙を封筒に収めるアリス。
「このままあっくんも一緒に行こうよ。ね、治兄?」
「そうだね。私としては二人きりでも良かったのだが。」
「あはは…じゃあ一緒に行こうかな。」
そう云うとアリスの横に並び、一緒に歩き出した。
暫く他愛もない会話をしながら歩いていると突然、アリスが立ち止まる。
太宰も何かに反応している様子。