第11章 変化
「抑も、警察が動いたのは匿名の垂れ込みがあったからだよ?『立て続けに組織が壊滅している。詳しくは不明だが共通した何かが原因の様だ。それは新種の麻薬かもしれないし科学兵器かもしれない。早急に対応しなければ大事になる。』って。」
「それは捜査資料にも記してあったね。」
「でも結局は麻薬も見付からなかったし、変わった武器も無かった。只、その垂れ込みに踊らされただけだよ。」
「そのようだね。で、目的は?」
「!」
「………。」
太宰の言葉に小さく反応する福沢。
アリスが押し黙るのを見て、何かを隠していることに初めて気付く。
チラリと見た太宰の顔は「アリスが事の真相を把握している」と確信している表情だった。
「………。」
それでも無言を貫き通すアリス。
やれやれと云いながらアリスにニッコリ笑い掛ける太宰。
「アリス」
「…何?」
「先刻も聞いたけどケーキ。美味しかったかい?」
「!」
皿に乗っていたケーキは半分以上、食された状態だ。
しまった…そう言うことだったのか。
アリスは諦めた様に溜め息を付くとケーキを食べるのを止めて、答えた。
「私への復讐だよ。」
―――
「アリスちゃん、本当に凄い子ですね。あンな短時間で調べてきちゃうなんて。」
「しかし、社長か太宰の許可無しに情報集めをすることは禁止されてる。」
「そうですよね。危ないですもん。」
「……相手がな。」
「「え?」」
国木田はフゥと息を吐く。
会話をしながらも報告書を作成する手は止まらない。
「そういえば、アリスちゃんの異能力って何?前に会ったとき、離れた位置から電話の相手の声を中ててたけど。」
鏡花が敦に訊ねる。
「うーん。僕は嘘が判るって聞いたけど。」
谷崎の方を見る敦。
「ボクが見たのは銃弾を全て止めてた。」
国木田の方を見る谷崎。
「……詳しくは知らんが太宰がチート級の異能力者だと言っていた。」
「チート級……。」
敦と鏡花がゴクリと唾をのみ込む。
「複数の異能力を持ってるンですか?」
「判らん。しかし、これだけはハッキリと言える。敵対は絶対にしない方がいい。」
「「………。」」
「?」
国木田の言葉に谷崎と鏡花が急に黙りこむ。
何やら心当たりが在る様だ。