第11章 変化
「ご苦労だったアリス。して、原因は。」
「『無い』よ。」
「!」
全員が険しい顔をする中、紅茶を一口飲むアリス。
「言われた通り、8つの組織全部を調べてきたんだけど。」
「え!?一時間そこらで8つ全部!?」
「潤兄は驚くの好きだね?後、落ち込むの。」
アリスがクスクス笑う。
谷崎は返す言葉もなく、落ち込む。
「話を戻すけど。その資料に載ってる一般企業2社は裏で麻薬の密売に手を貸している組織だった。」
「!」
「これまた、その資料に載ってる密輸組織と密売組織に関わりがあった。……でもただそれだけ。」
「……如何いうことだ?」
国木田が険しい顔をして質問する。
「その『表向き一般企業』が潰れたのは、2社共に只の経営不振。多額の借金を抱えたから麻薬の売買で金を稼ぐ心算だったみたいだけど、上手くいかなかったみたいだね。結局、生活苦を理由に一家心中。」
「では密売組織と密輸組織は。」
「密輸組織①は縄張をかけた抗争の末、壊滅。その組織を贔屓していた密売組織①②が報復に向かうも返り討ちにあって壊滅。そんで、残りの組織が壊滅したのは少し前の話だったみたいで原因は……『パラサイト』。余談だけど密輸組織①と密売組織①②を壊滅させた密輸組織Aはパラサイトが乗っ取りに成功して使役している組織だったよ。」
「……。」
一時間そこらでここまで調べられるとは。
国木田も谷崎も驚きのあまりに声を出せないでいた。
「じゃあ共通した原因なんて無いってこと?」
太宰がアリスの前にある空になった皿の上に、違うケーキを置きながら聞く。
「そうなるね。もう少し詳しく調べれば他に何か出てくるかもしれないけど…原因は無いよ。調べてこいって云うなら二時間頂戴?」
「否、充分だ。国木田、今の話を纏めて報告しろ。」
「はい、直ぐに取り掛かります。」
「あ、ではボクも。」
社長の命を受けて国木田が離席し、谷崎もそれに続いた。
パタンと扉が閉まる。
これで会議は終了の筈なのに動かない三人。
「それで?」
一番に口を開いたのは太宰だった。
ケーキの次は、紅茶を注ぎながら訊ねる。
「今、話した通りだよ?」
アリスは注いでもらった紅茶を口に含む。
太宰は全く納得していない。
その事に気付いてアリスは続けた。