第1章 情報屋
「抑も、其の情報屋ってのが胡散臭い。」
吐き捨てるようにいう太宰を横目で見ながら小さく「同感だ。」と中也は呟く。
その情報屋とやらを全く信用してないものの、ボスの命令は絶対。
2人は全く気乗りしないまま、取引現場に向かった。
「取引時間までもう一寸あるね。」
「ああ。早く終わらせてとっとと帰ろうぜ。」
「まぁ、その情報屋が持ってくる内容に依るけれどね。」
欠伸をしながら帰る算段をしている中也を見て、太宰は溜め息をつく。
中也に対して呆れているわけではなく、自分が述べた言葉に嫌気が差したのだ。
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「承知しました。して、その情報屋は何処に?」
何時通り一礼をして、笑顔のまま首領に問う。何時通りでないのは首領の方で、「あー」とか「うーん」とか歯切れの悪い言葉を並べ、視線を泳がせる首領に疑問符を浮かべ、2人は顔を見合わせる。
「「首領?」」
と、決して意図してタイミングを合わせたわけではないのに重なった問いに、漸く視線を戻し、
「それがねー。解らないんだよ。取引した者は大勢居るそうだが・・・誰1人、自分の取引内容以外覚えてないんだ。どんな容姿だったか、性別でさえも。」
とんでもないことを言い出す。
・・・・・。
「「え?」」
笑顔を崩さずに居れたのは、裏社会で生きるために処世術を心得ていたからだろう。
間は合ったけれど。
「何の情報もないんだ。取り敢えず、取引した人物のリストを渡すから彼等から話を聞くところから始めて。」
流石に正面からは話し辛いのか。
椅子を回転させて2人に背を向けた状態で、やや早口になりながらそう告げた。
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