第11章 変化
「治兄に会わなかった?」
食べ終わったからか、黙って聞いていたアリスが口を開く。
「え?太宰さん?出掛け間際に社に帰ってきたけど…。」
「その情報屋を捜すって言ってきた?」
「?うん。一応。」
頻りに太宰を気にしている様だ。
「何て言ってた?治兄。」
アリスの質問に、敦と谷崎が顔を見合わせる。
「「『手伝うように』って」」
「そっか。判った。」
ベンチから腰をあげて谷崎に手を出すアリス。
「「…ん?」」
三人とも全く状況が判っていない。
「何を調べればいいの?」
「………え?」
「あ、買出の荷物、一寸重いから二人が持ってよ?」
「……はい?」
谷崎と敦の頭の中は疑問符だらけだ。
首を傾げながらフリーズ気味の谷崎から持っていた資料を拝借するアリス。
「情報屋を捜すしか書いてないじゃん……。あ、懐かしいねー警察の誤射殺事件。これを調べるのに警察署に行かなきゃ駄目で嫌な思いをしたよー。」
暖気な口調で話すアリス。
敦と谷崎は先程同様に顔を見合わせ、直ぐにアリスの方を向き直し――
「「エエェ!?」」
腹の底から声をだし、叫んだ。
―――
「ただいま。」
「あ、鏡花ちゃん。おかえりー。」
太宰が爽やかに言う。
その後ろを買出の荷物を抱えながら明らかに落ち込んでいる敦と谷崎が続く。
「ん?どうしたんだい?二人とも。元気が無いようだけど」
「聞いて下さい、太宰さん!都市伝説級の情報屋の事なんですが!ってあれ?国木田さんは何を?」
「ん?ああ…。」
敦が先程受けた衝撃について話そうとしたところ、二人以上に落ち込んだ国木田が書類の処理を行っていた。
その書類たちは、先刻まで太宰の机に積まれていたもの。
「業務を迅速に粉すことが出来なかったって落ち込んじゃってね。私の分の仕事を粉すことで遅れを取り戻そうとしているのだよ。」
「「「?」」」
フフッと笑いながら説明する太宰だが全く理解できていない三人。
「話がよく見えませんが、それより聞いて下さい!」
「帰ったか。敦、谷崎。…鏡花も一緒だったか。」
どんよりした空気を纏い、三人に話し掛ける国木田。
丁度、総ての書類を片付け終わったところのようだ。
どうやら、三人の帰宅に全く気付いて居なかったらしい。