第11章 変化
「近くに住んでたから直ぐに話は聴けたものの、何の手懸かりも掴めませんでしたね。」
「そうだね。云ッていたパソコンのサイトの掲示板にも書き込みは無いみたいだし……」
「「はぁー。」」
二人揃って溜め息を着く。
「これからどうします?」
「一旦、社に戻ろうか。」
「まだ社を出て二時間も経ってませんけど」
帰ったら国木田に怒られるのではないかと云う考えが敦の脳裏に過る。
「あ。」
その敦の視界に見知った二人が映り、その方向を谷崎に指差してみせる。
「アリスちゃん、鏡花ちゃん。」
ベンチに座ってクレープを頬張っている、お使い二人組の名前を呼ぶ。
向こうも此方に気付き、手を振ってきた。
「あっくん、潤兄。二人もお出掛け?」
近付いて、一番に目が行ったのは2人……ではなくアリスの手にあるクレープだった。
鏡花が持つ方は至って普通のクレープなのだが。
アリスの違和感しかないクレープを敦が凝視する。
「……イチゴ凄いね。」
クレープは既に半分ほど食されていたが、それでも苺が大量に顔を出している。
「これ?オマケしてもらったの。」
「アリスちゃんだけ?」
「店員がアリスちゃんを怒らせたから。」
もくもく食べながら鏡花が理由を説明する。
理由を聞いて「あー。」と苦笑いするしかない敦と谷崎。
そこそこ機嫌がよさそうなアリスを見る限り、苺が全てを解決したようであった。
「二人は何をしてるの?」
「一寸、人捜しをね。」
「「人捜し?」」
クレープを食べながら二人の話を聞くアリスと鏡花。
「何でも調べてきちゃう情報屋を捜してるンだよ。」
「!」
「へぇー。そんな人居るんだ。」
皆が抱く疑問をアッサリと口にする鏡花。
アリスは少し反応を示すものの、黙々と食べ続けている。
「そうなんだよ。だから都市伝説かもって云われてて。」
あははと笑いながら答える敦。
アリスが最後の一口を口の中に放るも、鏡花は未だモグモグさせながら二人に訊ねる。
「見つかったの?」
「いや、見ての通りだよ。矢張り存在しないンじゃないかな。」
谷崎がガックリと肩を落とす。