第11章 変化
扉がクリーンヒットし、痛みのあまりにそのまま屈み込んだ敦に気付き、ハイテンションで入室してきた男、太宰が訊ねる。
「太宰……お前今まで何処をほっつき歩いてた……?」
国木田は国木田で、太宰の顔を見るや否やワナワナと怒りで震え出す。
「いや、なに。パトロールだよ!最近何かと物騒だからね!」
「何がパトロールだ!巫山戯るな!見ろ!お前の机に積まれた仕事の山を!それを片付けるまで外出させないからな!」
「えー。酷い。あんなの一日で片付く訳無いじゃないか。」
国木田と太宰のやり取りを痛みが治まってきてゆっくりと立ち上がった敦と谷崎が呆れながら観ている。
「アリスちゃんと全く同じ言い訳してるね、太宰さん。大丈夫かい?敦君。」
「……はい。もう大丈夫です。行きましょうか。」
涙目で答えながら敦は谷崎と社を出ようとする。
それに気づく太宰。
「おや?仕事かい?」
「あ、はい。都市伝説級の情報屋を捜しに。」
「!へぇ」
敦の答えに太宰がニヤリと笑う。
すかさず国木田が太宰の襟を掴み、太宰の机まで引き摺る。
「お前は先ずそれを片付けろ。」
「判っているとも。あ、二人とも。」
「「はい?」」
唇を尖らせて着席し、出ていこうとする二人を呼び止める。
「その都市伝説級の情報屋を見付けたら『手伝うように』と言うんだよ?」
「判りました。しっかり交渉してきます!」
敦が元気よく返事する。
太宰は「行ってらっしゃーい」と、軽い調子でいいながら手をヒラヒラさせて二人を見送った。
「ったく。お前といいアリスといい。今日は全く仕事してないだろう。」
「そういえばアリスは何処だい?」
「鏡花と買出だ。」
「そう。」
そういって先刻まで国木田が眺めていた資料に目を通し始める太宰。
「厄介な案件だ。お前もそれを早く片付けろ。終わり次第、敦たちに合流するぞ。」
「そんなに焦らなくても直ぐに片付くさ。」
「あ?偉く余裕だな?」
フッと笑いながら資料を机に置く太宰。
「私の事じゃないよ。」
「?」
「国木田君は迅速にこの件を片付けたいと見える」
「その通りだ。だから早く…」
「なのにそれを妨げた」
「何?如何言うことだ!?」
国木田が慌てて太宰に詰め寄り……
「!」
理由を聞いて直ぐ、国木田は絶望した。