第11章 変化
「どんな情報でも……凄いですね。」
「その人物に交渉した方が早そうですね。」
敦が感嘆し、谷崎が冷静に今からすべき事を整理する。変な顔をしているのは国木田だ。
「然し、噂に過ぎん。確かに取引したと云う人間は結構な数、居るんだが……その情報屋の事を何一つ覚えてないそうだ。」
「「え?」」
「本当に存在するかも判らん……都市伝説だ。」
国木田が頭に手を当て、眉間にシワを寄せた状態で言う。
でも国木田さんが『只の噂話』を信じるわけがない―――
「……何で国木田さんは知ってるんです?」
「過去に、マフィアの取調べの供述で、取引情報の入手方法がその情報屋だと云った人間が結構存在するんだ。」
「……成程。」
「一般人とも取引をしていたようで『警察が隠蔽を図った事件の真相』の情報提供を全財産と引き換えに入手し、事を公にした人間もいる。」
「もしかしてあの発砲事件ですか?関係ない通行人を勘違いで射殺した……。」
「ああ。それだ」
谷崎の言葉に肯定を示す。
その事件は敦にも聞き覚えがあった。
確かにその事件は当初、被害者男性が射殺相当の悪事を働いていたものであると云われていたが、警察側の人違いによる誤発砲の証拠、本来射殺される筈だった男の人相、それらを隠蔽しようとした痕跡等の証拠が世間に出回り、突然に状況が一変したのだ。
「そうだ。その男性の被害者遺族が、件の情報屋と取引したことを証言している。然し…」
「容姿など覚えてない、と。」
「………。」
国木田が難しい顔をして口を閉ざす。
どうやら敦の云ったことは正解だったようだ。
「しかし、マフィア相手よりは確かですよね。その遺族の方を中心に情報を集めてみます。」
「ああ…頼んだぞ。」
谷崎がそういうと敦に「行こう」と促す。
敦が頷いてドアノブに手を伸ばした瞬間
バンッ!
「グエッ」
「聞いておくれよ国木田君!漸く楽に死ねる方法を見付けたのだよ!後は一緒に心中してくれる美人さんを……ってあれ、敦君?そんなところで何をやっているんだい?」
探偵社の入り口扉が勢いよく開いた。