第10章 予期せぬ再会
「アキト、囲め。」
「はい!」
目的の連中のアジトの前に居る四人。
中也が指示するとアキトがポケットからライターを出し、点火する。
『大きくなってこの建物を囲め。』
ゴウッと云う音と共にライターの火が大きくなり、目の前の建物だけを覆う。
とてもライターだけで成し得る業ではないその光景を部下二人が驚きの声を上げて見ている。
「手前等はアキトから離れるな。コイツはこういう現場に来るのは初めてだからな。」
「「了解。」」
「――行くぞ。」
―――
「……車の音がする。」
「!?」
ピクリと物音に反応し、アリスが呟く。
暗い顔の男達が一斉に顔をあげる。
「市警か!?」
「……違うと思うよ。サイレン聞こえなかったし。」
そう告げると男達の顔がこの世の終わりのように歪む。
シーン……
静まりかえった倉庫。
然し、何事も起こらない。
「偶々通っただけの車だったんじゃねーか?」
「何だよ……心配して損した。」
「脅かすんじゃねーよ、この餓鬼が!」
男達がハハハと笑いながら口を開く。
男達と違ってアリスは警戒を解かない。
「ところでさ。」
「あ?なんだ?」
「私を誘拐したって誰か通報したの?」
「してるわけ無いだろ。今頃お前の保護者が……」
「私、親いないけど。」
「「「何ィ!?」」」
男達が一斉に騒ぐ。
「だから独りで歩いてたのに」
「いや、身寄りが無いならそんな綺麗な成りしてねーだろ!?」
「そうだっ!嘘ついてるんじゃないのか!?」
「嘘なんかつい……」
アリスが険しい顔で周囲を窺う。
それに釣られて男たちもキョロキョロし始めた。
「…焦げ臭い。」
「「!?」」
突如、鼻につく今までは無かった臭い。
先程までアリスの云うこと凡てを否定していた連中も流石にそれが出来ないほどハッキリとするのだ。
「囲まれたよ。逃げるか戦うか決めた方がいい。」
静かに放たれたその言葉に、ビクッと全員が肩を上げる程怯えて、倉庫の入り口の方を見る。
それとほぼ同時。
ガシャーン!
「「!」」
倉庫のシャッターがくの時に曲がって此方側に飛んできた。