第2章 夢主
その姿を見て、苦笑いしながら××はコラコラと言う。
「ゆっくりでいいんだ。先ずは此処に慣れることからね?そうだ!皆で自己紹介しよう!」
そう言うと皆、私の周りに集まってきてくれた。
明るく色々な事を話してくれてるけど、何かぼんやりする。
声が遠くに聴こえる。
皆の話を聴きながら、私は此処に連れてこられた日のことを振り返る。
―――
私は、誕生日の次の日、知らない男の人たちに連れられて大っきい建物に来た。
ママが「お仕事があるから先に行ってて」と笑いながら言ったのを今でもハッキリと覚えてる。
其れが『嘘』だと判っていたけれど、大好きなママが言うからお迎えに来た人たちの車に乗った。
二度とパパとママに会えないと言われたのは建物に着いてから。
「お家に帰して!助けて!パパ、ママ!!」
泣きじゃくりながら暴れた。
そんな私を2人の男の人が押さえ付け、もう1人いた男の人が顔をグーで殴る。
「!」
今まで受けたことのない衝撃と痛み。
痛いよぉ…そう思うけどまた叩かれたら嫌で声が止まる。
「よく聞け、餓鬼。お前は大好きなパパとママに金で売られたんだ。助けになんて来ない。」
え?
「お前、嘘が判るらしいじゃないか?」
私を殴った男の人がニヤリと嗤う。
「!」
「何ならもう一回言ってやろうか?お前は金で売られたんだ。助けなんてこない。」
「やめて!!」
「どうだ?嘘だったか?」
「違うもん!!そんなこと無いもん!!!」
どうして?
どうして鈴の音が聴こえないの?!
この人は嘘を付いているのにどうして!?
バタバタ暴れ続ける私に、脚を押さえていた男の人がポケットから黒の何かを取り出して私の方に向けた。
テレビでしか観たことないけど、それが鉄砲って名前なのは知ってる。
「しっかり押さえてろよ。手元狂ったら大変だ。」
バァン―――!
大っきい音がした。
「きゃあああーーーーーーーーーー!」
それと一緒くらいに、右の脹脛に先刻と比べ物にならない痛みがする。
「其でに逃げられねーだろ。死なれたら困る。早く止血しろ。」
殴った男の人が言う。
皆が私から離れる。
痛い、痛イ、いタい、痛イ、イタイ―――――
「うるせーんだよ、黙っとけっ!」
先刻、私を殴った男の人がグーパーグーパーしてからグーを作り、振り挙げる。