第10章 予期せぬ再会
「……あります。中也さんに拾ってもらったあの時から……俺はもうこの世界の住人です。」
顔は青褪めていたものの、眼は泳ぐことなく、ハッキリとした声で答えた。
その答えを聞いて中也がはぁと溜め息を溢す。
「度胸はあるな。最近の餓鬼ってのは皆こうか?」
「い、いえ……我々に怯まない子供など見たことありませんが…」
突然話を振られて、びくびくしながら答える部下その1。
「……中也さん?」
「後で情報屋……否、元情報屋に聞いてやる。断られそうだがケーキ1つで何とかなるだろ。」
「へっ?ケーキ?」
「後は金次第だが。乗り気にならなきゃケーキでも動かねーからな。」
「……変な人ですね。」
「彼奴と居るせいで性格が似てきてんだよ……。」
「?」
はぁ…と大袈裟に溜め息をつく。
「彼奴って?」
「聞くな。胸糞悪い」
「あ、はい。済みません。」
凄い気迫で言い返され、大人しく引っ込むアキト。
「………ったく。」
そういいながら窓の外を眺める中也。
外の景色は賑やかそのもので街中がキラキラしている。
「…………あ。」
その事に今更気付き、ハッとする。
「……おい、今日何日だ?」
「え?今日はクリスマスイブですよ。12月24日。」
「……。」
「何か予定でも?」
「否、ねーけど。アキト。情報は年明けまで待て。」
「えっ…あ、はい。今まで分からなかった事なんで全然大丈夫です。」
そうか……と云いながらまた窓の外を眺める中也。
「―――危なかった。」
「?」
そう呟いた中也の言葉の意味を知る者はこの車には居なかった。