第10章 予期せぬ再会
現場に向かう車の中――
「で?資料は見れたのか?」
「はい。全てを確認させてもらったんですけど有りませんでした。」
「そうか。市警もコンロの火の始末が出来てなかったせいだと言っていたんだろ?」
「はい。」
納得してないと云わんばかりの声音で返事するアキト。
「何をそんなに疑問に思ってることがあるんだよ。」
中也の質問に俯くと
「信じてもらえないかも知れないんですけど……」
小さい声でそう呟いた。
「信じるか否かは聞いて判断する。」
外方向きながら言う中也に苦笑して、話し始める。
「あの当時、俺はまだ1歳と少しだったんですけどハッキリと覚えてることがあるんです。」
「……犯人の顔か?」
「否、犯人かは分かんないんですけど……でも誰かが家を訪ねてきたんです。」
「……確かに信じ難いな。」
「でしょ?でもその後直ぐに両親が悲鳴を上げたんです。忘れることが出来ないくらい鮮明に覚えてます。」
「だったら可笑しな話だな。その訪問者が、火事で亡くなったように偽装してまで殺したい程の殺意を手前の両親に抱いていたなら…手前も殺されてる筈だ。」
「………そうなんです。でも俺は生きている。」
「で、それを調べるためにスラム街を彷徨いてたのか。」
「はい。棄てられた子供が一杯いる彼処なら…同じ様な境遇の人が居ると思ったんです。」
餓鬼の割りには頭が回る。
普通は其処まで考えるだろうか。
中也がアキトをチラリと見た後に溜め息をつく。
「どうしても知りたいんだな?」
「え?」
「其処にどんな理由があろうと興味はねーが、調べられないこともない。」
「本当ですか!?」
パアッとアキトの表情が明るくなる。
「只、マフィアに貸しを作って逃げるなんてこと出来なくなる。手前はこの世界で生きていく覚悟はあんのか?」
「!」
ゾクリと悪寒が走る。
運転している男と助手席に乗っている中也の部下ですら冷汗を浮かべる程だ。
アキトの顔も一気に青く染まった。
それほどに中也が真面目な顔して質問する。