第10章 予期せぬ再会
「……。」
太宰は何も言わなかった。
流石に今のアリスの発言には驚きを隠せないでいる福沢だったが、アリスは構わずに話を続ける。
「私は私の異能力をハッキリと理解したのは施設にいた時。それまでは普通に過ごしていた積もりだった。」
「……然し、何か無ければ異能力者とは判るまい。」
漸く反応できた福沢。
「嘘だけは判別出来てたんだよ…昔から。『ハッピーアンバースデー』は、ずっと発動してたんだと思う。よくよく考えてみれば…ハッキリと認識してなかっただけで、それ以外の事も出来てたし。」
アリスの『ハッピーアンバースデー』はアリスの意思に関係なくオートで発動する力。
条件はアリスに攻撃すること、或いはその恐れがある場合。
嘘は、そのせいで起こるかもしれない事態にアリスが巻き込まれる可能性を想定してか、自身に関係なくとも効果範囲内なら無条件で判別出来るらしい。
「その力で、何か見破ったらまずい嘘でも見抜いてしまったのかい?」
此処まで詳しくは聞いていなかったらしい太宰はアリスの頭を撫でながら訊ねる。
アリスが太宰の顔を見上げ
「正解だよ、治兄。」
苦笑しながら太宰に反応し、視線を福沢に戻す。
「両親の浮気をね……見抜いちゃたの。」
「!」
「当時の私が浮気なんて知る筈無いから……何気なく尋ねたことに2人が驚いた顔をして、「パパには言ったら駄目よ」とか「ママには秘密だよ」とか必死に言ってたのを今でも思い出せるよ。」
あはは、と乾いた笑いを交えながら話すアリス。
「それで『嘘が判る』アリスを如何にかしなければと考えていた2人に話が舞い込んだ…否、探したのか。」
「そう。お互い不倫していたのに、その関係をバレたくない。利害は一致していた。」
「成程。子供はまた作れば良いからね。」
「太宰!」
核心を得た発言をハッキリと口にした太宰。
それを福沢が一喝する。
「いいよ、福沢おじちゃん。治兄は人の考えを見透かす天才だし……本当の事だから。」
「………。」
険しい顔をしている福沢に、太宰の発言を気にも止めていないアリス。
それもそのはずだと判ったのは次の発言を聞いてからだった。
「実際、あの時既にあの女のお腹には赤ちゃんが居たんだから。」