第9章 パラサイト
「名前を使われたこと、本気で怒ってたからねぇー。貴方がマフィアって気付いたのは治兄の顔を見て怯えたから。云われてたんでしょ?『この男にだけは気を付けろ』みたいなこと」
「どうして……。」
ガクッと膝を折り、その場に崩れる男。
「で?逃走犯を何処にやったんだ?」
「さぁ?私は何もしてないよ?恐らく裏口の扉と繋いで逃走したんじゃない?」
「何!?早く言え!追うぞ!」
国木田が急に慌てて外に出ようとする。
「無駄だよ国兄。今頃ポートマフィアで拷問のため移送中だよ」
ね?っと警察官に話題を振る。
「!」
「監視カメラを見ていたのは男が逃走した瞬間に連絡するため。」
「判ってて逃走させたのか…?」
「まぁ結論からいえばそうだね。駄目だった?」
「当たり前だ!」
アリスに対して激昂する国木田。
其の間に入るのは矢張り太宰。
「国木田君。ポートマフィアの人間がパラサイトに成りすまして彼のように何人も潜んでいる。彼の逃走を企てたのはポートマフィアの方だ。」
「だったら何だというのだ!」
「此処には関係のない人間……犯罪者も、面会人の様な市民も来る。此処に彼が留まれば恐らく次にマフィアが取る行動は此の建物ごと彼を始末すること。」
「!」
「アリスは天秤に掛けたんだよ。此の建物を破壊して大勢の人間を犠牲にするか、死刑が確定して本日処刑される人間1人を犠牲にするかをね。」
―――
「お疲れ様でした。」
「お疲れ様ー敦君。鏡花ちゃんも今日は早く寝なよ?」
「はい。お先に失礼します。」
「お疲れ様でした。」
敦と鏡花の2人は探偵社を後にする。
それを見届けて国木田が太宰に話しかける。
「太宰。」
「ん?何?今日は真面目に報告書を書いているよ?」
「そんなことは如何でも良い。アリスについてだ。」
「…何だい?」
自分の膝の上に座り、身体を預けて眠ってしまっているアリスをチラリと見る太宰。
「何でも1人で背負うなと目が覚めたら言い聞かせておけ。後、きっちり説明するように言ってくれ。」
「何時も言い聞かせてはいるんだけどね。中々云うことを聞いてくれないのだよ。」
苦笑しながらアリスの頭を撫でる。