第9章 パラサイト

「有難う、アリス！君のお陰で頭が回り始めたよ。必ず君を迎えに来るから。」

「………出来れば良いね？無理だけど。」

抱き付いていた太宰から少し離れてアリスがいう。

そう告げたアリスの言葉を聞くことなく逃走犯は扉を出て―――姿を消した。

「で？」

男の姿が見えなくなってから太宰がアリスの方を向き、声を掛ける。

「何？」

「本当の理由さ。先刻のは嘘だろう？」

「「「！？」」」

全員が太宰とアリスを交互に見る。

「治兄も嘘を見抜く異能力者なの？」

「あはは。」

ムッとしながら太宰を見やるアリス。

「説明しろ！」

「…あの男はポートマフィアの恨みを買い過ぎた。だから死刑が確定して移送される今日を狙ってどうしても逃走させたかったんだよ。ね、ポートマフィアのお兄さん？」

「！」

そう告げて警察官の男を見る。

「この男がポートマフィアだと！？」

「ち、違う！私はマフィアなんかじゃッ…」

男が急に狼狽し始める。

「まあ、正確には「ポートマフィアの息が掛かった政治家のコネで合格した警察官」だね」

「！？」

男が完全に狼狽する。

「治兄、どうしよう？私には嘘って判ってるんだけど…それだけじゃ証拠にならないよね？」

「そうだね。では次は私が聞いてみようか。」

態とらしいやり取りを繰り広げる２人。

男の顔は恐怖で歪んでいる。

「ﾋｨｯ……ま、待ってください！」

「待つも何も、私は未だ何もしていないが？」

太宰と男のやり取りを黙って観ていた４人だが、国木田がアリスに訊ねる。

「如何いうことだ？」

「治兄の事が怖いみたいだね？」

解るけど。等とクスクス笑うアリス。

「あのぉー。矢っ張りよく判らないんですけど。」

「私も。」

「ボクも。」

敦を筆頭に鏡花と谷崎までも挙手しながら状況説明を求める。

「ポートマフィアはあの男を仲間にしたかったんじゃなくて、あの男が警察内部に侵入して出来る隙が必要だっただけ。隙に乗じて自分達の仲間を忍ばせる事が目的だったの。」

「何故それを！？」

太宰に怯えていた筈の男がアリスの方を向く。


それほど驚いているということは図星か、と国木田が１人で納得している。