第9章 パラサイト
追い討ちをかけるように男に笑顔で云い放つ太宰。
声は出さなかったが、直ぐにコクコクと首を縦に振り肯定の意を示すアリス。
「あ、あの男が触れていたところ。右だったっけ?」
自分の肩口に顔を埋めてるアリスの右頬にも口付けを落とす。
その行為に小さく肩が上がる程の反応を示すアリス。
その反応も気分を良くしたのか、フッと笑う太宰。
「あの男が触れた肩も腰も、後で同じ様に消毒してあげるからね。」
「……。」
「私の嫁があの男に汚されて…おい!探偵社!未成年に手を出してるあの男こそ犯罪者じゃないか!何を黙って観ている!」
「否定はせんがお前自身も死刑囚ってことを忘れるな。」
「がはぁっ…!」
突如立ち上がって絶叫する男に国木田が詰め寄り、投げ飛ばした後に拘束する。
「谷崎、軍警に連絡して車の手配をしろ。敦と鏡花は此奴を拘束できるものを探してきてくれ!」
「「はい!」」
国木田の指示で一斉に行動に出る3人。
「ねえねえ国木田君、私とアリスは?」
ニコニコしながら国木田に寄ってくる太宰と(抱えられたままの)アリス。
「…取り敢えず待機だ。」
チェッと口を尖らせて、男に言う。
「流石、狙いが警察庁だけあるね。犯罪が関わる組織の殆どにパラサイトが侵入しているなんて。」
「!」
「貴様!何故それを知っている!」
太宰の言葉に逃走犯の男が反応する。
「前回遭ったときから判っていたよ?ねぇ、アリス?」
「……うん。」
漸く落ち着いたのか、アリスは声に出して返事をした。
然し、次に質問するのは男ではなく国木田。
「そういえば車の中でもアリスは言っていたな。だが、前から知っていたのならば何故早く言わなかった?この拘置所ですらほぼ全員で此奴を庇護する程に侵食されていると云うのに!」
「痛っ!もう少し力を弱めてくれ!折れる!」
怒りが、男の拘束に影響する。
「…如何でもよかったんだよ。」
「!」
無意識に男を拘束する力が強まる程、怒気を含みながらいい放つ国木田。
男が抗議の声を上げたが力は弱まることは無かった。
更に追い打ちをかけるようにアリスの発言が響く。
「この男の所業が、一部の人間にだけだったけど表沙汰になったのは約2年前。」