第9章 パラサイト
「2人を見付けたら扉以外から外に出て。そうすれば異能の効力が切れる。私は多分、そのまま玄関に居るから……早く来てね?」
「判った!行こう、鏡花ちゃん!」
「うん。」
2人は走ってその場を去る。その姿が見えなくなるまで見送ってアリスも動き出す。
「私も行くかな。」
―――
「何処だ?」
キョロキョロしながら探す2人。
たまに出会う人々が2人を追いかける。
「殆ど敵みたい。」
「そうだ、ねっ!」
「ぐはっ」
敦が目の前の障害物を殴り飛ばす。
真っ向から敵対する人達を退けながら走る敦を突然、鏡花が袖を引っ張り止める。
「うわぁ!如何したの!?」
「此処!」
「事務室?」
「カメラのモニターがある、筈。」
「!成程!」
そう云ってドアノブに手を掛けた瞬間、扉が急に開き、敦にクリーンヒットする。
「!太宰さん。」
「あれ。鏡花ちゃん?君も来たのかい?」
「うん。」
「敦君は其処で何してるの?」
床に顔を押さえながら悶えている敦にも気付き、太宰が声を掛ける。
「太宰さんが開けた扉が当たったんです!」
「嗚呼。何か手応えがあったのは敦君だったのか。」
「それより如何して此処に?」
「カメラの映像を確認しててね。国木田君達を見付けたよ。」
太宰と鏡花が敦をそっちのけで話を進める。
国木田達の居場所に向かって走っている途中で敦が太宰に話しかける。
「太宰さんはその逃走犯を知ってるんですか?」
「ん?直接会ったことは無いけど見たことはあるよ。」
「慌てて出ていく位にヤバい人なんでしょ?」
「独りだと何も出来ない男だ。其れ程の脅威はないよ。只…」
「「只?」」
「私の一番大切なものに―――。」
「「?」」
太宰が話していると、国木田達が居ると思われる場所に到着する。
「此処だ。急ごう。」
―――
キィと扉を開けて中に入る。
「!」
玄関ホールに立っていたのは先程もあった逃走犯の男1人。
「君のことだから外に出ると思ったよ。」
「ご推察の通りの行動でご免なさい?」
「いやいや。君の異能力は本当に素晴らしい。」
「……。」
明るい口調で云う男を睨み付けているアリス。