第9章 パラサイト
「それよりも。絶対にバラバラに扉を開けないようにしないと全員違う部屋に飛ばされてしまうから。一度入ると、直ぐに戻っても元の部屋には戻れない様にされてると思うの。どんなタイミングで部屋を継ぎはぎしてるかは判んないから気を付けないと。」
「「……。」」
「聞いてる?私の話。」
「嗚呼…勿論。」
「何でそんなに反応が薄いの?」
「アリスちゃんの冷静さに関心がいって……」
「冷静かな?」
「うん。」
真顔で答える谷崎。
そっかと笑って谷崎を見る。
「この部屋から出たら件の男が待ち構えてる筈だよ」
3人で扉の前に行く。
アリスがドアノブに触れた瞬間
カチャリ
「「!」」
鍵が開いた。
「行こう。」
先程まで開かなかったドアを何事もなく開けて、先に進むアリス。それに国木田と谷崎が続いた。
「!」
進んだ部屋に居たのは2人の男。
一人は依頼主、もう一人は恐らく。
「やぁ!君だったのか!僕を知っている少女というのは」
「……。」
笑顔で3人に向かって話し掛けるのは20代半ばの青年。
「アリス、あの男が逃走犯か?」
「そう。」
「確かに頭良さそうな顔してますね。」
国木田が男を見据えたままアリスに問う。
肯定の返事を聞くと、此処まで誘導してきた男に向かって話し掛ける。
「お前は仮にも警察官ではなかったのか?」
「!今でも警察官ですよ。キャリア組のね。」
「直ぐにでも逃走共助の罪にとわれる。」
「どうかなぁー?」
「何?」
警察官との会話に逃走犯が混ざる。
その台詞に対して眉間にシワを寄せる国木田。
男は怪しい笑みを浮かべている。
「それよりも。アリスちゃんは僕達と一緒においで?君と僕が組めばこの国を牛耳るなんて、呼吸をするのと同じくらい簡単になる!」
「寝言は寝て云うものだよ?」
「寝言なもんか!君は凄い異能力者だ。頭もいいし、おまけに可愛い。正に僕の嫁に相応しい!」
「「!」」
冷ややかな眼で男を睨み付けるアリスと、男の嫁発言に驚くその他3人。
「無駄話は此処までだ。行くぞ!」
「はい!」
国木田と谷崎が男の方に向かって走り出す。
「おっと!それじゃまた後でね?アリスちゃん。必ず迎えに行くよ。」
そう言うと直ぐ後ろに在る扉を出ていく。