第9章 パラサイト
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「此処です。この部屋を抜けた瞬間、姿を消しました。」
「居室を出て直ぐじゃないか。」
「……返す言葉もありません。」
国木田の突っ込みに項垂れ気味で返す男。
「目星は?」
「見当が付きません。」
「聴き込みしますか?」
「否、時間がない……。彼奴を受け入れそうな組織を片っ端から潰したほうが早い。」
「ねぇ。今から何時間前に逃走したの?」
「えっ……凡そ2時間前です。」
「そしたら非常線をもう張ってるでしょ?引っ掛かって無いの?」
「はい。それらしい人物は全く。」
「写真貸して。なるべくここ最近、撮ったやつがいい。」
「あ……はい。直ぐに持ってきます。」
そう言って部屋から出ていこうとする男。
「あ、ねぇ。貴方は知らないの?犯人について。」
「はい。判りません。直ぐに探偵社に行くように言われましたので。」
「そっか。」
直ぐ戻ります、と言い出ていく男。
「国兄、潤兄。」
男が出ていったと同時にアリスが2人に呼び掛ける。
「何だ?」
「謀られたよ。完全に捕まった。」
「えッ!?」
2人に云うアリス。
「嘘を付いていたのか!」
「それもあるけど……おかしな話だよ。拘置所の職員…刑務官と警察官は別物でしょ?各々で非常線を張っている筈なのに捕まらないなんて。」
「確かに。では彼の男は?」
「確信は無いけど『パラサイト』なんだろうね、きっと。」
「早く追いかけましょう!」
そう言ってドアノブに手をやるも鍵が閉まっている。
「開きません!閉じ込められました!」
「何だと!?」
国木田が確認し、開かないと判るとドアに体当たりをする。
「クソッ、如何する!」
「鍵なら開けられるから落ち着いてよ。」
「「…え?」」
アッサリというアリスを唖然としながら見る2人。