第9章 パラサイト
「それが原因で社長に拒んだのか。」
「否、そうじゃないよ。私にとってマフィアに追われる事は大したことでは無かったんだけど……」
「「………。」」
問題発言だが敢えてスルーする2人、否、3人。
「怒らせたら拙い人を本気で怒らせちゃって……。」
珍しくアリスが怯えている。
怒らせたら不味い人間などアリスに限って居るのだろうか。
「パラサイト自体は大したことないんだよ。主犯の男も単体だと扉を繋げるだけで力が在る訳じゃないから。只、頭は良いよ。だから頭脳で組織に入り込み、その力を以て対抗する武力を手に入れなきゃいけなかったんだよ。」
「成程。『パラサイト』が如何に厄介な連中かは判った。」
「ポートマフィアを乗っ取って何をする気だったンでしょうね?」
谷崎が素朴な疑問を述べ、その解答をするアリス。
「その次の組織を乗っ取る心算だったんでしょ?」
「目的はポートマフィアではないのか!」
「否、ポートマフィアも欲しかったとは思うけど本当の目標は違う筈だよ。」
「じゃあ一体・・・」
「百凡犯罪を識り、窺う事が出来る組織がこの国には在るでしょ?」
「………真逆!」
3人が驚愕する。
アリスはふぅ、と息を吐くとアッサリ言った。
「警察庁だよ。」
―――
「いやー疲れたね、敦君。」
「太宰さんは殆ど何もしてないですけどね。」
半ば飽きれ気味に云う敦。
「何を云うんだい!?ちゃんと有力情報を得たではないか!」
「それだけでしょ!はぁ。」
漫才のような会話をしながら探偵社へ戻る2人。
「帰ったらアリスにお茶でも淹れて貰おう。」
「本当に仲が良いですよね。」
「なんたって恋人同士だからね!」
えへんと自慢気に語る太宰。
それを呆れ顔で見る敦。
「いつ聞いてもアリスちゃんが太宰さんの彼女なんて信じられませんけどね。」
「おや、如何してだい?」
「だって太宰さん、色々な女性に声掛けてるじゃないですか。」
「そうかい?」
「自覚無いんですか!?」
「確かに美人さんに心中を呼び掛けたりはしているが愛を囁いた憶えは無いよ?」
「違うんですか?」
「違うよ。」
何が違うかが一切判らずに居る敦。