第9章 パラサイト
「此れは憶測だけど、その時の▲▲の秘書が、逃走しているパラサイトの主犯だったんだと思う。」
「「!?」」
「あの屋敷で子供達を目撃したけど、追いかけて入っていった部屋を探しても誰も見付からなかったらしいんだよ。」
「そういえば『扉と扉を繋ぐ異能力者』ッて先刻云ッていたね?」
「そう。それはあの男と対峙したときに知ったんだけど、あの屋敷の子供たちもそうだったとすれば辻褄が合うんだ。」
人生経験から云えば下から2番目の少女だと云うのに、この少女、アリスの頭の良さは武装探偵社に於いて乱歩や太宰に次ぐ。
恐らくこの推測も中っていることだろう。
「具体的にどんな能力なんだい?」
「1つの建物内に存在する扉を自由に繋げる事が出来るんだよ。例えば、その力に掛かってから書斎への扉を開けようとする。間違いなく書斎の部屋の筈なのに、入ったら風呂場だった!みたいな感じ。能力を発動した瞬間にその場に居た人間のみが対象みたい。他の建物を繋いだりは出来ないから、そうやって嵌められてあたふたしている隙に逃走げたんだよ、きっと。拘置所にしろ留置場にしろ異能力者を拘束しておく施設にしろ、沢山の部屋が存在するからね。一度力に嵌まったら中々抜け出せないだろうし。」
「………その通りです。」
「国兄、潤兄。この説明で大丈夫だった?」
「嗚呼。十分だ。」
「有難うアリスちゃん。」
「で、アリスも閉じ込められて酷い目に合ったのか?」
「否、あってないよ?」
「あれ?でも先刻、社長にろくな目に合わなかったから仕事したくないッて云ってよね?」
「嗚呼。……あれね。」
アリスが急に落ち込んだように小声になる。
「?」
国木田と谷崎が顔を見合わせる。
「マフィア達は身内同士の争いの為に、お互いで情報屋を雇って不穏な動きを摘発し、潰し合ってたんだけどね?」
「うん。」
「私は嘘が判るから『パラサイト』自体を見付けちゃうことが多くって。」
「!」
「それに悩んだパラサイト達が私を『パラサイト』の主犯だと装ったんだよ。」
「え゛ッ」
谷崎が驚き過ぎてドアで頭を打つ。
「お陰で色々な組織に追われて疲労の毎日だったよ。」
「よく無事だったね……」
「ね。」
谷崎はかなり心配そうに云うもニコッと笑って返すアリス。