第9章 パラサイト
「私が動く時点で社長が貴方に釘を打ってることくらい想定済みだよ。貴方、政治家の力で今の地位に居るんでしょ?」
「……何故そんなことまで………」
「貴方が私の『嫌いな大人』だからだよ。良かったね?遭うのが私が探偵社に入った後で。」
「アリス止せ。」
アリスの顔が。声が。
嘗て対立した時と同じに成っていることに気付き、国木田が慌てて制止する。
「乱歩さんが無関係だと言っていたと社長が言っていたではないか。」
「そうだよアリスちゃん。乱歩さんが云うことが間違いな訳無いでしょ?」
それに続くように谷崎も優しくアリスに話しかける。
「………御免なさい。」
2人に説得され、落ち着きを取り戻したのか謝罪の旨を述べるアリス。
2人は怒ることなく安堵の息を漏らす。
少女の豹変に対して2人の慌てようが尋常で無かったことに気付き、男も反省したのか口を挟まないと3人に告げた。
「話を戻そう。▲▲はマフィアの云う通りの方法で金を稼ぎ始めたんだな?」
「そう。自分達の手を染めずに金を手に入れる、つまり資金提供があれば違う活動もしやすいからね。」
「違う活動?」
「それこそ『パラサイト』だよ。」
「「!」」
「この件でいえば、ポートマフィアの名を語ってる時点で、身に覚えのないポートマフィアは内部調査を始める。少なからず混乱が生じる筈だからその隙に『パラサイト』を送り込む…或いは既に送り込まれた『パラサイト』の人間によって、あたかも内部の人間が裏切って取引を行ったかのように装い、身内同士で争わせて戦力を削ぐ。」
「・・・。」
「ポートマフィアを乗っ取る事が出来ればこの界隈で困ることなど無い筈だからね。だから▲▲はその隙を作るための捨て駒。」
アッサリと話すアリス。
「▲▲が狙われた理由は?」
「……ライバルに勝ちたかったんだよ、きっと。」
「……そうか。」
言い淀んだアリスに違和感をおぼえたが、深くは聞かないことにした国木田。
恐らく詳しい理由も知っているだろうが話したくないと云うことなのだろう。