第9章 パラサイト
「偶々、関わった依頼でね。影を操る異能力者を捕まえたの。」
「それが『パラサイト』だったのか。」
「後で判ったことなんだけどね。それが事の発端。」
はぁと溜め息を付くアリス。
「あんまり良い思い出じゃなさそうだね。」
その様子を見て苦笑しながら谷崎が言う。
「まぁ。それが治兄との出会いだったんだけどね。それはそれは最悪で。」
「えェッ!?」
「……。」
驚く谷崎をよそに国木田は敢えて無言を貫いている。
「それは置いておいて。国兄、1年半くらい前の子供の誘拐事件覚えてる?」
「嗚呼。▲▲の屋敷で発見された事件だろう?」
眼鏡をクイッと持ち上げながら答える国木田。
「確か、解決したのクリスマスイブでしたよね?子供達の親がサンタクロースに感謝してましたよね。ニュースで観てましたよ。」
「それが私と国兄のファーストコンタクトだったんだけど。」
「何!?」
「!」
「それは如何でも良くて…」
「否、よくないだろ!どういうことだ!?」
衝撃の事実を告げられ、狼狽する国木田。
谷崎も驚きを隠せないでいる。
「思い出したいの?」
「当たり前だ!あの日、俺は何故か急に眠気が襲ってきて気が付いたら医務室のベッドだった!あの時の太宰ときたら――『仕事中に居眠りなんて国木田君らしくない。何か人には言えない事でも徹夜でしてたのかな?』なんてほざきやがって、お陰で暫くの間、深夜に怪しいことしていると社で噂になったんだぞ!」
車中にも関わらず、今にも立ち上がりそうな勢いだ。
その話を聴いて谷崎は苦笑し、アリスはクスクス笑っている。
「治兄らしいや。」
そういうと国木田の頭に手を乗せるアリス。
「『思い出していいよ』」
「!」
妙にアリスの声が頭に響く事に違和感をおぼえる国木田。
何の違和感も抱かなかった谷崎はその様子を黙って見ている。
「……眠ったのはお前のせいか?」
「そうなるねぇ。」
何かを思い出したらしい国木田がアリスに尋ねる。