第9章 パラサイト
「この男は確かに隠蔽工作を行ったが、マフィアの事など表に出れば一般市民の不安を煽ると判断された迄。」
「…それ以外は?」
「幹部になって日が浅く、あの議員との接触も数回のみ。あの一件とは無関係だ。乱歩が出掛け間際に言っていた。間違いない。」
「…そっか。」
まだ表情は暗いものの乱歩が云うならば、と少女の顔つきに戻ったアリスは躊躇いなく福沢の横に座る。
その様子までを最小限の呼吸で見ていたが如く、国木田と谷崎が長い息を吐き出す。
「それで警察の官僚が何の用なの?」
「…パラサイトです。」
「……。は?」
福沢の方を向いて質問したアリスだったが、男がそれに応える。
その答えが予想外の単語だった為、男の方を向く。
しかし、続きを話し出したのは福沢だ。
「今回の依頼は逃走犯の確保だ。」
「!」
「逃走犯!一体何の罪で投獄せれていたンですか?」
国木田と谷崎が反応し、質問する。
福沢がそれに答えようと口を開けた時、アリスが先に声を出す。
「その逃走犯が『パラサイト』の人間ってこと?」
「その通りだ。」
福沢がアリスの発言に肯定の意を示す。
「何です?その『パラサイト』ッて。」
「『パラサイト』とは、組織に侵入してその組織が持つ力を手に入れ、其処から密かに仲間を増やして内部から組織を壊滅に追いやり、更に大きい組織に入り込む事をを繰り返していた組織の名前です。」
「少し前にマフィア達の同士討ちが頻発していたのもこの『パラサイト』のせいだと推測されている。」
谷崎の質問に男が答え、国木田が補足する。
その話を黙って聞いていたアリスが突如、何かに気付いたように勢いよく立ち上がった。
「真逆、逃走げられたのって主犯格だった『扉と扉を繋ぐ異能力者』の男じゃないでしょうね!?」
「!」
「……。」
アリスの発言内容に驚愕する男と、無言で目を瞑っている福沢。
「……如何してそれを……」
漸く声を絞り出して反応した男が、正解と告げたと同時にアリスが舌打ちする。
「何で死刑執行が決まってたのに逃がしたりするわけ?何れだけ無能なの!?」
アリスの怒りは尋常じゃなかった。