第9章 パラサイト
「国木田。今動ける人員は?」
「私を含めて3人です。」
「2人を此処へ。」
「しかし……否、判りました。」
一礼して社長室を出る国木田。
その社長室の主である福沢は目の前にいるスーツを着た男の方を見、口を開いた。
「大事に至る前に、此方も凡る手を尽くし逃走犯の確保に当たろう。然し、恙無く事を終えるため1つだけ約束願いたい。」
「勿論。事が事なだけに、ある程度の事は目を瞑るよう仰せ遣っております。して、約束とは?」
「余計な詮索をしないことだ。この約束を違えれば不測の事態が生じる恐れがある。然すれば、助ける事など不可能に等しい。」
「……判りました。肝に命じます。」
深々と頭を下げ、条件を飲む男。
話が終わったタイミングを見計らったが如く、扉をノックする音が響く。
「社長。連れてきました。」
国木田が事務所から戻ってきた。
「失礼します。」
一緒に入ってきたのは谷崎と、
「・・・。」
男を威嚇する様に鋭い目付きで見るアリスだった。
「アリス。」
福沢がアリスの名を呼ぶ。
しかし、アリスの注意は男から反れない。
「…何で私を呼んだの?」
「依頼だ。」
「国兄と潤兄が行けば良い。私は嫌だよ。」
「仕事をせねば生きていくことなど不可能だ。」
「…。」
当然の事を云われ押し黙るアリス。
そんな福沢とアリスのやり取りを外野は黙ってみていた。
アリスがスーツの男を睨み付けていたのには理由があった。
「抑も、何で隠蔽工作を図っていた男が首にならずにのうのうと仕事続けられるわけ?」
「!?」
アリスの指摘にスーツの男が反応する。
「あー…真逆。」
「「「!」」」
アリスが殺気だつ。
「あの件、警察も絡んでたの…?」
「ヒィッ!」
男が腰を抜かし、その場に崩れ落ちる。
とても少女とは思えない程の殺気が部屋を包む。
国木田と谷崎ですら動けずにその場を見ているだけ。
「アリス、そこまでだ。」
「!」
社長がアリスの頭をポンと叩くと、瞬時に殺気が途絶える。