第8章 爆破予告
「何でも結婚間際だった男性と些細な事で喧嘩して、そのまま破局してしまい、自暴自棄になっているみたいでして…。死ねるならこのまま死にたいから此処に居座りたいと。」
先程の剣幕など消え失せ、支配人が汗を拭きながら答えた。
「可哀想だろう?」
「…面倒だな。」
太宰の問いかけに国木田がボソッと呟いた。
ガチャリ
呟きと同タイミングでドアが開く。
「!」
全員が一斉に其方の方を向く。
入ってきたのはアリスと従業員の男。
予想通りの人物が入ってきたのだが
「「「!」」」
「「アリス!?」」
全員が驚いたのはその格好だった。
「国兄。全部見つけたんだけど、矢っ張りもう1つの予想が当たっちゃったみたいでね?」
アリスは回収した5つの爆弾ごとビニールヒモでグルグルと縛られており、従業員の男に刃物を突きつけられていた。
爆弾のタイマーは1つだけカウントをしている。
その時間は後10分を切っていた。
『全部の階に短時間で爆弾の仕掛けを済ませるなんて難しい筈だから、もしかすると―――共犯者が居るかも。』
「貴様が共犯者だったのか!」
アリスの言っていた通りの状況。
国木田が少し焦る。
「……アリスにそんな乱暴をする理由は何だい?」
「!?」
太宰の眼が鋭く従業員の男を射抜く。
男は睨まれただけなのにビクッと体を強張らせた後、小刻みに震え出す。
「治兄。そんなに殺気立ったら私に刃が当たっちゃう。」
「嗚呼…御免。」
ムスッとしながらもこの状況に怯えてすらいないアリスが、太宰の方に文句を言う。
太宰は苦笑して謝るも男に対しての怒りは収めない。
「貴様、理由を言え。何故アリスをそんな目に合わせる!」
今度は国木田が従業員に問う。
「俺は…ヒーローになる予定だった!」
男が、叫んだ。