第8章 爆破予告
声も今まで話していた少女との声とは全くの別物の様だ。
従業員が目を開けるだけ開き、アリスを見ている。
「私は2階の爆弾を回収してくるから、国兄は先に1階に行ってて?」
『否、しかし!』
「どうしても合流するっていうならこの爆弾、私が爆発させるよ。」
『・・・。』
思っていたよりも太宰に対し、相当頭にきているらしいアリスの過激発言に国木田も押し黙る。
「じゃあ1階でね?」
アリスが元の、少女らしい声でそう告げると返事を待つことなく電話を切った。
恐らく国木田達はこれ以上アリスを刺激しないように1階へ向かうだろう。
「2階に行くかな。」
爆弾を抱え直し、目の前にあるエスカレーターの下りの方へ歩き出すアリス。それを慌てて従業員が追いかけた。
「待って!俺も!」
「別に付いて来なくて良いよ。1階に行ってないと爆発しちゃうかもよ。」
「いいや。君が逃げるまで一緒に行くよ。爆弾を発見するところも見たいしね。」
「・・・。」
アリスはそれ以上、何も言うことなく2階へ向かった。
―――
「遅い…。手子摺っているのか?」
「否、アリスの事だ。それはないよ。」
「何故、そう断言出来るんです?!あんな幼い少女が独りで探しているというのに手伝いにも行かないなんて!」
太宰と国木田は従業員室に来ていた。
中には眠ったままの犯人と、支配人。先程よりも1人少ない従業員達と、その代わりに増えた太宰に付きまとっていた女性。
国木田と太宰に抗議の声を上げたのは支配人だった。
それに太宰が反応する。
「此処は大型店だから彼方此方に防犯カメラがある。」
「それが何だっていうんです!」
少し怒っている支配人をよそに、国木田が呟く。
「…ハッキングか。」
従業員達に響動めきが起こる。
そんなことはお構いなしに太宰が続ける。
「恐らくね。未だ来ないとしたら別の理由だ。もう少し待とう。」
「嗚呼。…ところで。」
「ん?」
国木田が従業員に混じっている女性の方をちらりと見る。
「何故、逃げていない?」
響動めきも収まり、全員が女性の方を向く。
女性は何も答えず俯いたまま…
否。泣き疲れて眠っている様だ。