第8章 爆破予告
「アリス?!如何して此処に?!」
1番見られたくない人物に1番見られたくない場面を観られ、狼狽する太宰。
手中の爆弾のタイマーが時間を減らしていく事等、全く眼中にない。
「貴女何なの?!私達2人の世界を邪魔するなんて!」
太宰に抱き付くことを忘れず、言い放つ女性。
「あ、お構い無く。仕事で通りすがっただけなので。」
満面の笑みで答えると直ぐにアリスは来た方向へ引き返した。
慌てて追いかけようとする太宰。
其れを必死にしがみついて止める女性。
「誤解なんだアリス。話を聞いてくれ給え!」
必死に言う太宰の言葉に反応し、スタスタ歩き去っていたのをピタリと止める。
其れを見てホッと一息付く太宰だった―――が。
ギギギ…と振り返るアリスの顔は盤若のお面の様。
ビクーッ
太宰が固まる。
「何が誤解なの?どうせ『私と一緒に心中をー』って声を掛けた女性が偶々、自殺志願者で身の上話を聞いた後で如何やって死ぬかを段取りしている内にお昼時になり、手頃なデパートを見付けて入ったところ、突然の爆破予告に遭遇して丁度良かった!ってなったんじゃないワケ?」
「……返す言葉もございません。」
「真逆、私達の後を付けていたの?!」
どうやら本当にその通りらしい。
「そんな事するくらいなら事務所で書類書いてた方がマシだよ。」
「アリス…私が悪かったから…いい加減、機嫌を直しておくれ。」
「…2人仲良く炭に成り果てるといいよ。私は此の後、国兄とケーキの約束があるから仕事に戻るね。」
「!」
そう言うとスタスタとアリスは去って行く。
女性はアリスに向かってあっかんべーをする。
「…国木田君も居るのか。」
新しい情報を入手した太宰は微かな声で呟き、何かを企み始めた。