第8章 爆破予告
―――
「却説と。何処に在るかなー?」
7階フロアの右の方をキョロキョロしながら探すアリス。
「タイマーがデジタルじゃ無かったら時計の音を拾え……」
「―――!」
「――――!?」
「話し声?」
何を言っているかは聞き取れないが、何処からか男女が言い合う声がする。
客に対して挨拶等をする余裕すら無かった、必死の爆破お知らせアナウンスを嘘だと認識した人でも残っていたのだろうか…。
そう考えながら声のする方向へ歩みを進めるアリス。
「!」
アリスの視界に、件の男女と思われる姿を捉える。
………。
近付いても此方に気付くことなく、男女は言い合いを続けている。
「私はそろそろ行かないと!このままでは他の者に被害が出てしまう。其れは何としてでも避けなければならないのだよ!」
「もう皆とっくに逃げてしまいましたわ!此処には私と貴方様だけ。さぁ!このまま2人で彼方の世界へ参りましょう!」
男性は汗をダラダラ流しながら女性に言うも、女性は男性に必死に抱き付いている。
イラリッ…
アリスの米神に青筋が浮かび上がる。
会話を聞かなければ。
その人物さえ、アリスの全く知らない他人だったならば。
爆破予告の放送に怯え、此の場から動けない美女を美男子が介抱し、必死に逃げようとする少女漫画的場面にも見えた為、適当に対応して此の場から逃がそうと考えていたアリスだったが…。
その怒りを軽く浮かせた右足に込めて、
ダンッ
勢いよく足を鳴らす。
「「!?」」
その音に驚き、男女がアリスの方を振り向く。
音を発した人物の姿を認識した瞬間、男性の顔から一気に血の気が引く。
「今、大変な状況なんで此れをあげるから他所でやっていただけますか?治兄。」
ニッコリ笑いながら言い放ち、先程見つけたばかりの爆弾を美男子こと、太宰に半ば投げつけるように渡す。
爆弾のタイマーが再びカウントを始めた。