第7章 陽の当たる場所
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「入社試験?」
「そうだよ。」
五日も眠っていたのにまだ眠いのか。
目を擦りながらアリスは乱歩達の話を聞く。
太宰は未だにアリスの真後ろだ。
「トランプ買ってきました。」
息を切らして谷崎が戻ってくる。
「私、別に探偵社に入社なんてしなくていいんだけど。」
「何を言う、小娘!12、3歳の娘が独りで生きていくには大変な――」
「16歳。」
「「えっ?」」
「今年17になるの。」
ぷいっと外方向くアリス。
「否、如何見たって小学…ぐはっ!」
「女性に失礼なこと言うンじゃ無いよ!」
国木田を殴り飛ばす与謝野。
「でも本当。5年も経ってるのにあんまり見た目変わらないね?」
乱歩が悪気なくアリスに言う。
その言葉にピクリと太宰が反応したことをアリスは溜め息で応える。
「私の異能力『ワンダーランド』は大抵の事をやってのけれるけど其れなりのリスクを伴うの。」
「リスク…」
与謝野が心配そうにアリスを見る。
他の皆にも緊張が走る。
「力を発動し過ぎると、眠りにつくの。」
皆の力が一斉に抜け落ちた。
「疲れたら眠る。当たり前の事だろう!」
国木田がすかさず突っ込む。
「5日も眠り続けることは当たり前なの?」
「!」
アリスの言葉に、口を閉ざす。また皆の顔に緊張の色が浮かぶ。
「力の消費による眠りの時間は、皆の時の中とは異なる時間軸みたいなんだよ。」
「?」
乱歩以外の皆がポカンとする。
「眠っている間、君だけ時間が止まっているってこと?」
「「?!」」
「そういうこと。流石、乱歩兄。」
ニッコリ笑う。
「私の中に時計が在るの。普通、時計が表す数字は5分単位だけど、その時計の単位は1日。だから短くて1日、最長で12日だね。その針が再び重なるまで私の意識は此方側に無い。その間、此方側にある身体は何の問題もなく眠っているように見えるけど、実際は私だけ停止しているんだよ。」
「アリスの見た目が幼いのはそのせいって事か。」
「うん。皆が1年過ごしていても、私だけ1年経ってなかったりするからね。」
ニッコリ笑うアリス。
笑い事ではない、と乱歩以外の全員が言葉を失う。