第7章 陽の当たる場所
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「ではあの娘は前回の実験時に拐かされた子供の内の1人だと。」
「はい。詳しくは話したがらないので聞いてませんが。」
嘘を交えながら太宰は社長である福沢に言う。
「道理で。」
太宰の言葉に納得する福沢。
「そういえば、社長も乱歩さんも知り合いだったんですね。」
「嗚呼。5年ほど前に。」
「アリスってば、あの時も殺人事件に巻き込まれててねー。」
「5年前…。」
『今日ねー武装探偵社の社員に助けてもらっちゃった』
そういえばそんなことを云っていたと回想する太宰。
「太宰は何でアリスのことを知ってるの?」
「ああ。恋人なんですよ」
乱歩の質問にサラリと答える太宰に全員が固まる。
「……は?」
「………すまん、太宰。もう一度云ってくれるか?」
「私とアリスは恋人なんです。」
はあああぁああ!?
真面目な会議が暫く途絶える事になった。
「して、社長。娘が目を覚ましたら如何するお心算で?」
国木田が眼鏡を正して社長に伺いをたてる。
太宰は先程とは打って変わって項垂れている。
「でも大嫌いって云ってた……大嫌いっ……」
そればかりを呪文のように唱えている。
そんな太宰はさておいて。
国木田の質問に間髪入れずに福沢は答える。
「うちの社員にする。」
「「「!」」」
乱歩以外の全員が驚きの表情を浮かべる。
「あの娘は言った。『未だやらねばならぬことがある』と。恐らく、其れがこの手帳の奪還だったのだろう。」
太宰の方を見て福沢が言う。太宰も同意を示す様に頷く。
「其れが終わったのだ。陽の当たる場所にて生きる術を教えねばならん。このまま放っておけば同じ様なことを繰り返す。」
ハッキリと告げた福沢に反論するものなど誰1人居る筈もなく、会議は「アリスを探偵社の社員にすること」で幕を閉じた。