第7章 陽の当たる場所
扉に近付くにつれ、誰かの会話している声が聞こえる。
太宰と国木田が部屋に入る。
「た、確かに車を止めたのを私は見たんだ!」
「だから?」
「銃弾も止められる人間を造れると思った!だからっ」
「あの子を殺したんだ?」
「違う!殺す気なんて!」
目の前の恐怖に、腰を抜かして後退りする男と
「じゃあなんで◇◇は死んだの?」
口だけ笑っている悪魔みたいな少女の姿。
◇◇…。
太宰と国木田がその名に反応する。
矢張り、あの防犯カメラに映っていたのはアリスで
◇◇と関わりがあったのだ。
「死の間際になれば……止められると思ってっ……」
「へえ。じゃああの時車を止めなかったらあの子を殺さなかった?」
「!嗚呼!勿論!」
男は少女の問に躊躇い無く返事をする。
「嘘でしょ?」
「!」
「あんまり人の能力を見くびらない方がいい。」
「!」
急に男が床に這いつくばる様な姿勢になる。
次第にミシミシッと嫌な音が響く。
止めてくれ、許してくれと男が懇願する。
「あの子は同じこと云わなかったのかな?」
「!?」
ボキンッ
どこかの骨が折れる。
「おい、太宰!何が起きている!?」
「恐らく、あの男の周囲だけ空気を圧縮しているんだ」
「何ぃ!?」
慌ててアリスの方に駆け寄る。
「助けッ……!」
国木田の声が聞こえたのか。男が二人を見る。
「最後に1つだけ。」
それを遮るようにアリスは続ける。
「車を止めたのはあの子じゃない。」
「が…ぁ!」
男が血を吐く。内蔵が潰れ始めたようだ。
「止めるんだ!アリス!」
「私だよ。」
グシャリ。
太宰が制止するのと、アリスが答えを告げたのと、男が潰れたのが重なった。
「あの時、『私が車を止めた』って云ってれば◇◇は死なずに済んだと思う?」
アリスはゆっくり振り返り、太宰を見る。
「『太宰さん』」
治兄―――
「!」
何時もならばそう呼ぶ筈の少女の目には、光が無かった。