第7章 陽の当たる場所
「アリスもう止めるんだ。」
「…治兄、▲▼の護衛するんだって?」
「!」
中也の云っていた通りだったか。
「…本当なんだ。」
太宰の表情を見て、アリスは目を閉じる。
口だけでも笑えてた表情が、一瞬で無くなる。
「今、この瞬間から敵だよ。精々殺されないように頑張ってね?」
「話を聞くんだ。そんなことせずとも解決――」
「話すことなんて無い!」
トンッとアリスは地面を跳ねると、一瞬で倉庫扉の前に移動する。
逃げる気か!
逃がせば捕らえることは難しい事は身を以て知っている。
次に会うとするならば………敵だ。
慌てて太宰が追いかける。
「待って、アリス!私は――」
「治兄なんて大嫌いだもん!」
「!」
振り返って言い放ったアリスは泣いていた―――。
―――
「あの少女は太宰の知り合いだったか。」
「はい。」
探偵社に戻ってから直ぐに開かれた会議。
社長が乱歩に事のあらましを聞いて太宰に声を掛ける。
「あの少女は一体何者なんだ?」
国木田が尋ねる。
「見ての通り、異能力者だよ。チート級のね。」
太宰は息をつきながら話す。
「乱歩さん。どんな異能力だと思います?」
谷崎が小声で乱歩に聞く。乱歩も少し考える。
「人を一瞬で移動させたり、嘘を見破ったり、吹っ飛ばしたり、銃弾も止めちゃったり、酸素濃度を下げたり出来る力…」
「えェ?!彼女、そんなに色々出来るンですか?!」
谷崎が驚いて、大声をあげる。
「見えないものを操る能力者ってところかな?」
乱歩が太宰に振る。
流石に、理に則っていない異能力を当てるのは難しい。
「ほぼ正解です。アリスの『ワンダーランド』は―――」
太宰が説明を始めようとしたときだった。
『ダメだよ?記憶しちゃったら』
「「「!?」」」
脳内に響き渡る、此の場に居ない少女の声。
「?」
太宰と社長以外の全員が、一瞬、フリーズする。