第1章 情報屋
「だったら、何で今回は調べたりしたんだ?」
この返しなら誰でも疑問に思うことを中也が口にする。
「お兄ちゃん達、取引相手が私みたいな子供って判ってなかったでしょ?」
本当に眠いのか。また欠伸しながら中也の質問に答える。
「「!」」
図星だ。
そのせいで此処に至るまでどれだけ苦労したことか。
「それなのに弐千萬円って大金を、現金一括で払うっていうから本当かどうかを知りたかったのと…そんなことを簡単に言って退ける相手に、一寸興味が湧いただけ。」
ニコッと笑って答える。
「唯、其れだけの理由で?」と言う積もりがアリスの、でも…と呟いたで中断する。
中也を指差し、
「此方のお兄ちゃんは来るかもって思ってたけど」
次に太宰。
「此方のお兄ちゃんは予想外。」
「「……。」」
「本当は一寸困ってるんだよ?お兄ちゃん、異能力が効かないんでしょ?」
「おや。私と争う積もりだったのかい?」
「そんなことしないよ。私、戦闘向きじゃないもん。それに、退屈なのは嫌いだけど面倒くさいことはもっと嫌い。」
プイッとそっぽ向く。
その弾みでアリスの首から下げていた時計が揺れる。
針が指している時間は、正に日付を跨ごうとしている瞬間だった。
「もうこんな時間だ。眠いから帰るねー。」
じゃあねーと歩き出したアリスを太宰が制止した。
「一寸待って。」
振り返り、太宰と向き合う。
「?未だ何かあるの?」
眠さも相まってか、不機嫌な顔をするアリス。
「中身、確認しなくていいのかい?」
「え??」
不適な笑みを浮かべ、太宰が続ける。
「アリスは確かに優秀な情報屋だ。しかし、君は未だ幼い。今回の様に、どれだけ危険の伴う情報を掴めても、子供であるが故に、唯々、利用されるだけされて、報酬をきちんと支払われていない可能性が無いとは限らない。」
「…それが今だと?」
「そうだ。と言ったら如何する?」
2人のやり取りを黙って聞いてる中也。
首領が用意した弐千萬円は間違いなく本物だった。
何処ぞの誰かも判らぬ輩に本気で用意する必要があるのかと思いもしたが、情報を得られなかったら渡さなければ良いだけの事。
そんな考えを抱きながらケースを運んでいたが…。