第1章 頬はずっと火傷寸前
「はい、では、かんぱーい!」
「…………はあ」
音頭の後、意気揚々と缶の中身を喉に流し込む。それを見届けてから、グリーンも自分の缶に口をつける。のものとは違ってアルコールは1ミリも入っていない。
「甘いーおいしいー」
「それはよかったな」
「グリーンくんも飲む?」
「いらん。未成年に酒を勧めるな」
「グリーンくんって全然年下に見えないんだよね~。今いくつなの?」
「………十七」
「やだーかわいー」
ぴくりとこめかみが引きつる。テンションがうざい。というか、すでに酔ってないか、こいつ。
「将来の夢とかあるの?トキワジムを守り続けることとか?」
「いや…俺は代理で就任しただけだからな。正式なジムリーダーが復帰すれば降りるし、復帰が延びるならこのままだし、まぁ状況次第だ」
「あーレッドくんだよね、たしか。グリーンくんの幼なじみでポケモンリーグ優勝者の。私も一度だけ話したことあるよ」
「そうなのか?」
「自転車がパンクして困っていたところに遭遇して、うちの予備を差し上げただけなんだけどねー」
「……ろくな出会いじゃないな」
そんなくだらない会話をしながらもの酒のペースは進み、テーブルの上にはどんどん空き缶が増えていく。炭酸で腹が膨れるくらいで他に変化のない自分に対し、目の前のは目に見えて酔っ払っていくのがわかった。白い頬はほんのり朱を帯び、眦はとろけ、上機嫌にぺらぺら喋る口は呂律がなんだか危うい。典型的な酔っ払い方だ。
グリーンくん、と呼ぶ声に独特の甘ったるい響きが含まれ始めたのを感じ、グリーンは危機感を抱いた。
「そのくらいにしたらどうだ、。だいぶ酔っているだろう」
「ところで~グリーンくんは~」
「人の話を聞け!」
「好きなひととか、いるの?」
みしっ、と手の中の缶が不自然な音を立てて変形した。当のは何も知らずにけらけら笑っている。