第1章 頬はずっと火傷寸前
ちょっと晩酌しない?と閉館寸前のジムにやってきてビニール袋を掲げたに、グリーンはあきれ顔をした。
「馬鹿を言うな。未成年は飲酒禁止だ」
「えっ、グリーンくん未成年なの?」
「お前は違うのか?」
「私は二十歳だよ。この前誕生日だったから」
「…………」
知らなかった、と色んな意味で苦い気持ちがグリーンの胸に広がる。誕生日など祝いあう間柄ではないが、過ぎたあとに知らされるというのもそれはそれで微妙だ。というか、自分より三つも年上だったのか。外見や振る舞いからして十六そこらだと思っていた。
「なんか失礼なこと考えてるね」
「別に。で、どうするんだそれ。言っておくが俺は飲まないぞ。ジムリーダーの立場もある」
「バレなければいいんだよバレなければ」
「ふざけるな!神聖なジムでジムリーダーが飲酒なんて馬鹿な真似できるか!」
「真面目だねえ」
からからと悪びれない笑い声にげんなりする。なんでこいつをジムの中に迎え入れてしまったんだか。面倒くさいことになるのは目に見えていただろうに。
「じゃあお酒は私が飲むから、グリーンくんはノンアルコールにすればいいよ。グリーンくん下戸かもしれないと思って一応買ってきたの」
「腹の立つ気遣いだな」
「やだ褒めないで。ちょっとお皿借りるね」
「…そこの棚に入ってる」
何やってるんだと思いつつ、無理やり追い出す気力もないし、ここまできたらもう付き合ってやるかと半ば諦めの気持ちでグリーンは控え室の安っぽいソファに腰を下ろす。その向かいで、てきぱきと晩酌の準備をするは鼻歌なんか歌ってやけに楽しげである。とてつもなく今更だが、こいつはジムに何をしに来たんだろう。