第1章 頬はずっと火傷寸前
「グリーンくーん?」
「…人の気も知らずに…勝手なことを」
「え?」
「そんなに知りたいなら教えてやる」
お前は考えたこともないんだろう。なぜ挑戦者でもないお前を無条件に奥へ招き入れるのか。飲めもしないのに黙って晩酌に付き合っているのか。たかが年齢差にこれほどむきになってしまうのか。
遠回しなやり方では伝わらないというなら、いいだろう。行動で教えてやる。
「グリーン…く……っ」
掴んだ胸倉を強引に引き寄せ、ぐっと顔を近づける。重ねた唇からはほろ苦いアルコールの味がした。後頭部に手を添えて深く口付け、何度も角度を変えて呼吸を奪う。やがて、限界とばかりにがグリーンの胸を叩き始めた頃、彼はようやっとを解放した。
「っは……なんっ…!」
「…わかっただろ、俺が誰を好きなのか」
息を切らしたがはっと表情を変える。キスの息苦しさも手伝ってか頬は先ほどより赤い。けれどそれを見下ろす自分はもっと赤くなっているのだろうと、顔の熱さからグリーンは察していた。
「ぐ、グリーンくん」
「もう帰れ。今日は送っていく」
わざとの声にかぶせてそう言い放てば、は大人しく頷き、がしゃがしゃと晩酌の片付けを始めた。彼女に背を向けてグリーンも帰り支度を始める。
狭い室内で別々の騒音を立てながら、帰り道に何を話そうかと、二人してそればかりを考えていた。