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黒の組織の天才医師()

第1章 悲しい別れ



「はい、もしもーし?」
「ピンクレディだな、今すぐ手術の準備をしてくれ!」
「その声はアイリッシュ!怪我でもしたの?」

電話の向こうの剣幕に圧倒されながら、愛紗は聞き返した。

「そうだ。負傷者は俺ではない。ピスコだ!頭を打たれた!」

頭!
愛紗は瞬間的に思った。
組織の中でも神がかり的な手術技術を持つ言われる自分でも、頭を打たれた人間は厳しい。
仮に蘇生出来たとしても障害が残るの可能性は高いだろう。
身体だけ残して、誰かと入れえ変えてしまった方が早いけれど、アイリッシュが望むのはそういう事ではない。

「わかった。早く手術室へ」

それでも受けようと思ったのは、依頼してきたアイリッシュも、当人だというピスコの事も好いているからだ。

「ありがたい!今すぐ回収して向かう!」

アイリッシュの言葉も喜びが含まれた。
腕を信頼されていると感じ、身が引き締まる。
要件を告げたら切れてしまった電話を、受話器に置く事なく放り出して愛紗は手術のための準備へ向かう。

男が愛紗が放置した受話器を正す、するとまた電話が音を立てて鳴った。

急いで部屋から出ようとしていた愛紗はそれを聞いては走って戻って来る。
電話だけは自分の仕事だ。
世話役の声が出ないのは自分のせいなのだから。

「はい、もしもーし!急いでるから緊急じゃない限り、他の人に頼んで!」
「ジンだ」
「あ?ジンも怪我したの?」
「ちげぇ、お前は誰の手術をするつもりだ、ピンクレディ」
「誰ってピスコ。撃たれちゃったんだって」
「大方アイリッシュからの依頼だろうが、誰に撃たれたかは聞いたか?」
「悠長に話してる時間無いんだってば!切っちゃうよ」

電話越しに聞こえるジンの声は落ち着いたもので、とても怪我をしているようには聞こえなかった。
周りにけが人がいるようにも。

冷徹なジンの事だから、周りにけが人が居ようとも声色は変わらないかもしれないが、それにしたって可笑しい。
ここの電話にかけてきた以上、何か用があるはずだ。


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