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黒の組織の天才医師()

第1章 悲しい別れ



「そう焦るな。いいか、よく聞け。ピスコを撃ったのは俺だ」
「うそ」
「嘘じゃねぇ。これはあの方も了承済みだ。奴はミスを犯した。だから死んだのさ」
「なんで、そんな酷い事」
「奴はミスを犯した。だから死んだのさ。死体も燃えちまってる。お前に出来る事なんてねぇのさ、ピンクレディ」

手に持っていたと受話器を落とす。床について大きな音を立てたが、愛紗は気にも留めなかった。
それ程ショックだった。
家族が家族に殺された事に。

呆然とする愛紗の様子に驚いて、世話役の男が受話器を取る。
耳を当ててみると、声が聞こえた。

「まあ、お前にとっていい事もある。シェリーは居たみてぇだからな」

シェリー!
世話役はその名を聞いて、慌てて愛紗に受話器を渡す。
既に泣いている愛紗は受け取る事はせず、へたり込んでしまった。

「泣いてるのか。ッチ、またしばらく使いものにならなくなるな」

苛立ったようにジンが言い捨てると、通話が終わった。
使い物にならなくしたのはお前だろうと、世話役は思ったが反論したりはしない。
電話の向こうに対して意思を表示する術を男は持っていない。

泣き続ける愛紗だったが、懐からスマホを取り出し、誰かにコールする。
何コール目かでつながると、酷い泣き声で話しかけた。

「もしもし?ピスコは死んでしまっていいの?……うん、うん、……はい、わかりました」

短い通話が終わるとがっくりと項垂れた。
そんな愛紗に言葉を投げかける事ができない世話役の男は泣き場所を提供するように、正面に腰を下ろして抱きしめた。

「うぅううう、ピスコぉ……ごめんなさい、アイリッシュ……」

亡くなったピスコを悼み、アイリッシュの期待に応えられなかった事を詫びる。
あの方からもピスコの死を容認されてしまっては、愛紗に出来る事なんて無かった。
こんな悲しい思いをしなくちゃいけないなんて、どうしてみんな一緒にいられないんだろう。

哀しくて涙が止まらない。
優しい鼓動が聞こえる。
愛紗の大好きなトクリトクリと脈打つ音だ。



「長生きしてね。約束だよ」


曖昧に世話役は笑う。

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