第4章 可哀想な子供
「雰囲気から黒の組織って感じじゃなかった。けど、口にしたのは黒の組織の事だ。何か知らないか?」
「彼女の事ならよく知っているわ。もう1人の男はあった事はあるけど詳しくは知らないけれど。
貴方の言うように彼女はあまり黒の組織にには似つかわしくない存在かもしれない。少なくとも悪人ではないわ」
「じゃあ何で組織にいんだよ?」
「彼女は私と同じように両親が組織の人間だった。小さい頃は一緒に過ごしていたわ。後に専門分野が違ったから離れたけど、それでも組織の中では親しい方だった」
志保は話し出す。
何故愛紗が組織の外に出たのか、分からないのだ。
昔はそんな事をするタイプでは無かった。
自室と仕事部屋、与えられた場所だけで、望むものを与えられ暮らしていたはずなのに。
「天才的な外科医よ。もっとも得意とするのは移植手術。愛紗は神の手の持ち主……。けれど天は二物を与えなかったのね、それ以外はてんで駄目だった。日常生活に苦労するレベルでね」
「ああ、そういや、揺らしちゃ駄目っつてんのに、エレベーターを揺らしそうになって焦ったぜ」
「そういう所があるの。注意力が散漫で、まあ手術の時はしっかりしているらしいけれど。だから世話役がついていたわ。何年か前に変ったと記憶している。頭をいじって声帯も切ったと言っていたわね」
コナンはその言葉に驚く。
「おいおいおい、悪い人間じゃなかったのかよ」
「ええ、彼女は善悪の判断があまりつかないのよ。どこまでやっていいか分からないの。仕方の無い事よ、教えられてないんですもの」
「それって」
「組織から出た事は無い人間は組織の在り方が全て。彼女はそういう人間。組織に似つかわしくない性格でありながら、誰よりも組織を大切にしている」
「大事に?」
「そうよ。彼女にとって組織が家。親も亡くなっているし、あの方を慕っているみたい。彼女は医者だったからあの方やラムとも直接のやり取りをしていたの」
とんだ大物だった。
あの少女は。